メ イ ン
□海の演奏会
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俺と獄寺は海にいた。
来ていたスーツと靴を脱いで砂浜へと走る。
思いのほか砂が熱くて慌てて海へと入ると、獄寺も同じだったようだ。
冷たい海水に足を浸しながら、笑いあう。
見渡せば、人1人見当たらない。
男2人で何をやっているんだと言われる心配もなく、俺たちは遊んだ。
ふいに、波に足をとられた獄寺の体が傾いだ。
慌てて手を伸ばしたけれど間に合わなくて、2人して転倒。
激しい水しぶきと、水音。
頭からびしょ濡れになって一瞬呆然としたけれど、すぐにまた楽しい気持ちが湧いてきた。
水を滴らせながら、笑う。
2人きりの砂浜で。
この空間は、今だけは俺たちのものだ。
空も、風も、海も全て。
今だけは俺たちのためだけに存在しているんだ。
どちらともなく笑い声が止まると、視線が絡み合った。
お互い、言葉がなくても何を求めているのかは分かっていた。
近づく顔。
重なる唇。
そして気づく。
あぁ、これは夢なのだと。
だって、ここに獄寺がいるはずないのだから。