メ イ ン

□海の演奏会
1ページ/2ページ

俺と獄寺は海にいた。

来ていたスーツと靴を脱いで砂浜へと走る。

思いのほか砂が熱くて慌てて海へと入ると、獄寺も同じだったようだ。

冷たい海水に足を浸しながら、笑いあう。



見渡せば、人1人見当たらない。

男2人で何をやっているんだと言われる心配もなく、俺たちは遊んだ。

ふいに、波に足をとられた獄寺の体が傾いだ。

慌てて手を伸ばしたけれど間に合わなくて、2人して転倒。

激しい水しぶきと、水音。

頭からびしょ濡れになって一瞬呆然としたけれど、すぐにまた楽しい気持ちが湧いてきた。

水を滴らせながら、笑う。

2人きりの砂浜で。

この空間は、今だけは俺たちのものだ。

空も、風も、海も全て。

今だけは俺たちのためだけに存在しているんだ。



どちらともなく笑い声が止まると、視線が絡み合った。

お互い、言葉がなくても何を求めているのかは分かっていた。


近づく顔。
重なる唇。


そして気づく。




あぁ、これは夢なのだと。



だって、ここに獄寺がいるはずないのだから。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ