メ イ ン

□花ざかり
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ボンゴレは年に2回、健康診断が行われる。
それはマフィアと言う特殊な職業上、日々怪我に耐えない人たちの健康状態を把握していたいということと、本人にも常に自己管理を徹底して欲しいと言う方針からだ。


本日はボンゴレの健康診断日。
皆今日だけは堅苦しいスーツから一変、Tシャツやらジャージやらに姿を変える。

「これやってると、学生時代を思い出すよな」
「うん、ちょっとだけワクワクするよね」

もちろんそれは、ボスだろうと剣豪だろうと同じこと。
ツナも山本もTシャツにハーフパンツと言う恰好で、身長を計っていた。

「あ、俺1センチ伸びた。すげぇ、もう24なのにな」
「うわ!俺2ミリ縮んでる!!最悪だー!」
「しょうがないって。もう午後だし。背骨の状態で2ミリくらい変わるぜ?」
「そうだよね…、うん、そう信じることにする」

午前中に大体の人が終わらせたのか、医療班内は人がまばらだ。
学生の頃と比べるとかなり検査項目も増えているので、2人はさっさと次へと移動する。
診断表の中身を埋めながら、ツナはふと疑問に思ったことを聞いた。

「山本って獄寺君と一緒に回ってるとばっかり思ってたんだけど、どうしたの?」
「それがさ、午前中スタッフ手伝いしてたところまでは一緒だったんだけど、その後消えちゃって」
「どうしたのかな?」
「午後もスタッフってわけじゃないよなぁ…?」

首を傾げつつ2人が次に向かったのは『内科』だった。
薄いカーテンで仕切られた部屋いくつかの部屋があったが、ここもほとんど人がいなかった。
そのため、小声で誰かが話している声が2人の耳に届いた。
先客がいたことに関しては別段気にすることではない。
だが、その声の主が先ほど話題に上がっていた人物のものだったので、思わずツナと山本は目を見合わせていた。

「…さっさと終わらせりゃ良いって言ってんだろ」
「だぁかぁらぁ、男は診ねぇって。他にも内科医いんだろー?そっち行けよ」
「そっちがダメだからこっち来てんだろっ!俺だって嫌なんだよ」
「言ったろ。男は診ねぇ」
「じゃあどうしろっていうんだよ!」
「大人しくあと2、3日待ってりゃ良いだろ」
「それはダメだ!こ、こんなくだらない理由でボンゴレの行事を蔑ろにするなんて…!」

カーテンの先にいるのは、獄寺とシャマルのようだ。
どうやらツナたちとは別行動で検査をしていたらしい。
だが、なにやら揉めている様子だ。
内科医として呼んだのはシャマルだけではないし、その1室が使えないことはそれほど問題ではないが、やはり気になる。
首を傾げつつしばらく聞き耳を立てていたが、どうやら事態は一向に進んでいない。
仲裁に入るべきかな、とツナは決めた。
山本もツナの考えが分かったらしく軽く頷く。

「シャマル、獄寺君、どうしかした?」
「じゅ、10代目!?」

始めに声をかけたら、ひどく動揺した獄寺の声が聞こえた。

「開けるよー?」
「あああ開けないでくださっ…!」

シャーッとカーテンの滑る音と一緒に現れたのは、上半身裸の獄寺とやる気なさそうに机にダレているシャマルの姿であった。
開けられたことに関してシャマルは気にした様子はない。
だが、獄寺はツナの姿を確認した途端。

「見ないでください10代目ぇぇぇぇえ〜〜!!」

悲痛な声を上げて、シャツで自分の体を覆い隠した。
だが、もう遅い。
ツナは目の前にいた獄寺の体を見て、真っ赤になって固まった。
そして理解した。
先ほどの獄寺とシャマルの会話の意味を。

「おーおー、24にもなって初心だねぇ」
「あ、獄寺まだそれ消えてなかったのか」

面白そうに言ったシャマルの言葉に反応できたのは、山本だけだった。
ツナの目にしたもの。
それは、まるで花びらを散らしたかのように体中に紅い痕を残す獄寺の姿だった。


END
山本があんまりにも吸い付くので当日までに消えなかったんです。朝着替える時、さぞかし慌てたことでしょう。

ひよこ屋様より
5つのお題「ほのぼの」より
4.花ざかり
2008.10.5

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