メ イ ン

□ふかふかベッド
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「本当にごめんっ!獄寺君!」
「は、い?」

2週間の海外出張を終えて本部へと戻った直後、なぜか10代目に頭を下げられた。
あまりの驚きに大量に持っていた報告書を盛大に落として、慌てて拾うと10代目も手伝ってくださった。
なんてお優しい。
再び報告書を抱えなおすと、今度は10代目から1枚の書類を渡された。
書類には簡潔に数行書かれているだけ。

「えっと…、10代目?これは、なんですか?」
「うん、そのままの意味、ではあるんだけど」
「え…、『ボンゴレ本部より、一切の外出を禁ず』…ですか?無期限?え?」

俺何かしましたっけ?と思わず首を傾げた。
こんな辞令を貰ったのは初めてだ。

「実はね、獄寺君が海外行ってる間にこっちで良くないことが起きて」
「どうしたんですか!?」

10代目の話を聞くに、どうやら今まで同盟ファミリーだったところが良からぬ動きをしているらしい。
しかも、対ボンゴレ用に兵器を開発しているとのことだ。

「でもね、これはあくまでこちらの予想でしかないんだけど、その兵器は向こうの技術面でどうも限界があるみたいなんだ」

しかし、同盟を組んでいるだけあってあちらのファミリーも多少なりともボンゴレのことを知っている。
何の秘策もなしに乗り込んでくるほどバカではないらしい。
その兵器を完成させるべく、敵が考えた手段。
それが。

「獄寺君、君の誘拐計画なんだよ」
「お、俺ですか?」
「雲雀さんが情報を掴んでね。獄寺君は右腕としてボンゴレ内の情報に精通している上、いろんな研究にも関わってきたでしょう?どうもそれで目を付けられたみたい。しかも」

10代目は言いにくそうに、1度ため息をついてから決心したように口を開いた。

「君の不在中に、自宅の方が襲撃されたんだよ」
「え!?」

確かに、今回の俺の出張は秘密裏に行われたものだから同盟ファミリーが不在中に来たのは分かる。
相手にとっては残念な結果だっただろうが、俺の心中は穏やかじゃなかった。
なぜなら、あの家に住んでいるのは俺だけじゃなくて。

「あ、山本なら無傷だから。ていうか、その襲撃撃退したの山本だから」
「あ、そうなんですか」
「ただねー…」

本当ならばその時に捕虜の1人でも捕まえられれば、同盟ファミリーに何かしら言ったり、場合によっては手を出すこともあっただろう。
だが、頭に血がのぼった山本は冷静さを欠いてしまったせいですっかり敵に逃げられてしまったとのことだった。
山本曰く、全員とっ捕まえてやろうと思って片っ端から手をつけたらうっかり逃げられたらしい。
二兎追うものは、と言うことわざを中学の頃に習ったのを忘れたのか。

「何でも、せっかく獄寺君と選んだベッドをメチャメチャにされてカッとなったって言ってたよ」
「あのバカ…」

失態をした挙句、10代目になんて恥ずかしいことを言い出すんだ。
これは一発殴らないと気がすまない。
無意識のうちに拳を握っていたら、10代目に宥められた。

「まぁまぁ、もう怒らないであげて。リボーンも山本に対して怒ったんだよ。珍しいよね」

確かに。
リボーンさんが山本に対して怒るだなんてなかなか見られるものではない。
とにかく、今自分の置かれている状況は分かった。
同時に、「道理で」と納得する。
今日の出張は秘密裏で行われてたものだから、いつもは1人で本部まで戻るのだが、やたらに向かえの人数がいたのだ。
まるで俺が10代目の護衛をするかのような待遇で、一体何があったのかと思ったが。

「ですが10代目。俺は自分の身は自分で守れますし」
「うん。それ言うと思ったよ。でもね、分かって欲しいんだ。これは獄寺君1人の問題じゃないんだよ。今すごくボンゴレ内で警戒してる問題なんだ」
「狙われてるのって、俺、なんですよね?」
「相手がちょっと大きいからね。どんな手段に出るか分からないんだよ。こっちとしてはね、万が一でも獄寺君を敵に渡したくないんだ」

分かるよね?と10代目は少し厳しい顔で仰られる。
けれど、その表情は罪悪感も混ざっていて、なんだか俺が10代目を責めている気持ちになってきた。

「獄寺君のことを信用していないわけではないんだよ。でも、もし敵の手に落ちるようなことになったらどうしよう。獄寺君自身は絶対そんな兵器作りに手は貸さないと思っても、もし人質を取られたりしたら?やらなきゃ人質殺すぞって言われたら?それに、獄寺君は最悪な結果を考えたら、…最悪な決断をするでしょ?」
「それは…」
「だから、お願い。ほとぼりが冷めるまではボンゴレの監視下にいて欲しい」

再び、10代目に頭を下げられたので慌てて顔を上げてもらう。
もとより、こんな風に辞令が出ている時点でもう俺には逆らえない。
それを分かっていながら、わざわざこうして来てくださる10代目は本当にお優しい。

「分かりました。出張から戻ってきたばかりですし、泊まりの荷物はそのままあります。すぐにでも行けますが、どうしますか?」
「ありがとう獄寺君。監視下と言っても、普段と変わりなく本部で生活してくれて構わないから。もちろんプライベートも守るからね!あ、出来るなら寝泊りは客室使って。はい、これ鍵」

客室のカードキーを手渡される。
執務室にも仮眠スペースがあるとは言え、さすがに仕事場が生活感に溢れるのは避けたいところだった。
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