》弔い花
ほおずきをもぎ取る。
柔らかいオレンジ色が目に優しい。
その色合いに自然と笑みが零れた。
「………」
アイツの、
初めて二人で居た時にアイツが見せてくれた炎の色と同じだったから。
まだメリー号だった頃の狭い見張り台の中、月明かりが頼りの夜に「ちゃんと顔が見たい」と燈された炎。
『やっぱり綺麗だ』
全てを曝して求め合った後に再確認するように呟くと幸せそうに笑われた。
『好きだよ』
囁いて抱き締められる。
『……』
その時、燈された炎の色と包み込む腕の優しさは同じだと気付いた。
どちらも暖かくて心地良い。
愛おしくて堪らない―――
「大切、だった」
ポツリと口から零れて。
「一番大事だったのにな」
口にした言葉と共に涙が自然と溢れ出た。
「っ…」
無くしたくなかった
吐露出来ない想いの代わりに頬を伝う雫がポタリとほおずきに静かに落ちた。
涙に濡れたほおずきがなぜだか笑っているように見えた。
-END-
ほおずきが花かどうかは分かりませんが…むしろ実?
タイトルがしっくりしたので許してあげてください(笑)