リク

□ファイナルアンサー プリーズ
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修学旅行。
学生達の楽しみな行事の一つであるそれ。
そしてその時に良くあるのは愛の告白で。


「好きだ」


旅行最終日の夜。
ゾロもまた人目の無い場所に呼び出されたらその恒例行事の洗礼を受けた。


「っ!?」


それに有り得ない程驚くゾロ。
勿論、恋愛事にさほど興味の無い自分にそれが回って来たのも一つの原因だが、それより何より驚愕したのはそれが…


「ゾロ、お前が好きなんだ」


なぜか異性からのものでは無く、同性からのものだったからだ。





【ファイナルアンサー プリーズ】





「……」


どうしたもんか。
ゾロは一人悶々と悩みながら机に頬杖を付いていた。
修学旅行から帰って来てからずっと考えるのはただ一つの事。
同じクラスのサンジについてで。
ソイツはほんの数日前まで親友だと思っていた人物。
しかし…


『…返事は帰ってからで良い』


そう言われて四日経った。
つまり帰って来て三日目。
未だに返事は返していない。


「…はぁ‥」


無意識に溜め息が零れる。
あの告白で何かがいっぺんに変わってしまうのかと思っていた。
今までの親友としての関係が壊れるのかと、言われたその夜は一人考えて眠れなかった。
だけど相手はその後も普段と変わらず接してきて。いつも通りたわいない話をしてくるのに内心ドギマギしてしまう自分にゾロはいい加減嫌気がさしていた。


「……どうしろってんだ」


頭をガシガシと乱暴に掻く。


「分かんねぇ」


途方に暮れたように呟くとゾロはそのまま机に突っ伏してしまった。





「……撃沈」


その様子を自分の机から見ていたサンジ。


「そろそろ…限界かな」


一人検討を付けてサンジは次の時間の教科書を机から取り出す、が。


「……」


不自然に途中で止まる手。


「ははっ」


見つめた先、本を持った自分の手が震えているのに僅かに苦笑が漏れた。








その日の夜。部活もすっかり終わってしまって校内には人気の全く無い時間帯。


「で、結論は?」

「Σ!」


誰もいない音楽室にゾロを予め呼び出しておいたサンジはやって来た相手にすぐに聞く。
間を置かない早急過ぎるその問いに正面に立ったゾロは動揺で微かに身体を揺らした。


「今日で三日。お前も無い頭で十分悩んだだろ?」


相手の見せた態度にサンジは表情を変えないまま更に続ける。


「一応もう一度言っといてやる。…お前が好きだ」

「っ!」


そうして蒼い瞳が真っ直ぐゾロを見ると静かに告げた。
途端に四日前と同じその告白にゾロはたじろぐ。まだ結論が出ていない中、どうすれば良いのか全く分からなかった。


「冗談じゃ…ねぇんだな?」


だから再度確認するように聞いてしまう。
出来れば何かの間違いで、これが全て笑い話で終わらせられたらと頭の片隅で願いながらも、だけど本当の所は返ってくる答えなんて当に分かっていた。


「あ?ふざけんなよ。こんな事冗談で言える程俺は暇じゃねぇよ」


やはり返された言葉は予想を裏切らないもので。
相手の苛立ち混じりの口調にゾロはますます困惑する。


「俺はな」


そして言いながら急に近付いてくるサンジ。


「…なっ」


それにゾロは思わず後ろに下がる。


「!」


だが数歩目で何かに踵が当たる。一応確認するように視線を遣ればそれは壁で。
これ以上逃げられない現状に足がそこで止まった。


「本気なんだよ」


しかしそんなゾロの肩をサンジは掴むとドンッと躊躇無く迫っていた壁へと相手の身体を押し付ける。


「ぃっ‥何しやがる!」

「答えろよ」


無遠慮なそれに憤りを覚えるゾロ。キッとサンジを睨み付けるが、しかし怯む事なく相手も同じようにゾロを睨み返してきた。


「いつものお前みたいにはっきり白黒付けろ」

「っ!…んン!!!」


更に続けると同時にサンジの唇がゾロの口を塞ぐ。


「んっ…ふぐ!」


突然の思いもしなかった行為にゾロは目を見開いた。途端に間近の蒼い瞳とかち合う。
見つめ合う相手のその目が酷く熱っぽくって。


「っ!?」


ゾクリとゾロは変な感覚に身体が粟立つのを感じた。
そのまま暫く続く口付けになぜか抵抗が出来ないままゾロは顔が熱くなっていくのを実感する。
気が遠くなる程触れ合う時間が長く思えた。


「‥っぷは!…はぁはぁ」


そして漸く離される唇。
即座にゾロは足りなくなっていた酸素を求めて荒い呼吸を繰り返す。


「ゾロ…」


そんな相手の名前を呼ぶとそのまま抱き締めてくるサンジ。
ギュッと手放さないように腕に力を込めた。


「っテメェ!」


相手のその行動にやっと息の整ったゾロは声を荒げると同時にサンジの頭を思いっきり殴り付ける。


「っ――!?」

「お前がふざけんな!離せよ!!!」

「いってぇな!いきなり何しやがる!」


衝撃と痛みに一瞬息を詰めるサンジ。直後、憤るゾロの肩口に埋めていたその顔を上げると睨み付ける。
勿論そうしながらもその腕はゾロを離さない。


「そりゃこっちの台詞だ!いきなり何してんだこのグル眉!!!」

「キスに決まってんだろ!分かんねぇのか単細胞植物!」


至近距離で睨み合いながらの言い合い。
悪態を付きながら身体を離そうとゾロがもがくが、どこにそんな力があるのかサンジの拘束からはなぜか逃れられないままで。


「だから何でンな事すんだって聞いてんだよ!」

「好きだからに決まってんだろ!!!」


腹立ち紛れにそうゾロが尋ねれば、当然のようにサンジが間髪入れずにまた言い返してきた。


「っ!!?」

「さっきから言ってんだろ。好きだって!まだ分かんねぇならお前が理解出来るまで俺は何度でも言うぞ!!!」


投げ付けられた言葉に一瞬驚きで怯む相手にサンジは視線を合わせたまま吐き捨てる。


「好きだ。好きだ。好きだ!お前がすっげェ好きだ!!!」

「ばっ」

「死ぬ程好きだ!間違いなく…」


言いながらサンジがゾロの腰をグイッと力任せに引き寄せた。
そのせいで自然とまた少し近付く顔。


「誰よりも好きだ。クソ愛してる」


感情に合わせるように色味を増した深い蒼い瞳が馬鹿みたいに大真面目に告げて来る気持ち。


「Σあ、愛しっ!?」


贈られたその台詞にたちまちゾロは狼狽してしまう。愛してるなんて馴染みの無い言葉を言われるとは夢にも思っていなくって。
一気に身体が熱くなっていく。


「っ…アホかよ」


そして無意識に呆れたように零すと一気にゾロは脱力感に襲われた。


「お前はホントにとんでもねぇアホだ」


再度同じ内容を繰り返して軽い溜め息を付く。


「‥っ…」


だが、口ではそう言いながらもゾロの心臓は早鐘を打っているように心拍数を有り得ない速さで上げ続けていて。
自分のそんな身体の変調に内心激しく動揺しながらゾロはサンジから顔を逸らした。


「誰がアホだ。で、だからいい加減返事はどーなんだよ?」

「うっ‥」


すると言われた内容にかなり不服そうな声音を吐くとゾロの顎をグイッと自分の方に向けさせて無理矢理そっぽを向けていた顔を戻してしまうサンジ。
嫌でもまたピタリとお互いの目が合う。


「……あ〜…」

「答えろよゾロ」


それでも悪あがきとばかりに有らぬ方向に視線を泳がせながら言葉を濁すゾロにサンジは真剣な口調で更に言い募った。


「……」


それに数拍押し黙ってしまうゾロ。
しかしその間にもますます熟れた林檎のようにその頬が朱らんでいくと。


「ほ‥保留だ」


一言言って真っ赤に染まっりきった顔でゾロは仏頂面を見せた。


「は?」


聞いた途端、サンジの口から思わず間抜けな声が出る。
内心待ち焦がれていた相手の返答の余りに予想外の内容にたちまち目を丸くした。


「好き…かもしれねぇ」


すると続いて口にされたのは小さな呟きで。それと共にゾロはまた顔を逸らした。


「…けど違うかもしれねぇ。この気持ちはただの友情の延長かもしれねぇし‥」


背けたまま酷く言いにくそうにゾロが続ける。


「まだ分かんねぇんだ。…ただ今は心臓がすげぇうるせぇし、顔がめちゃくちゃ熱い」

「おまっ…」

「だけどこれが好きって事なのかどうかは今の俺には判断できねぇ」


困り果てたように一人喋る相手にサンジは戸惑いながらも抱き締める腕を緩めた。
恐らくは力を抜いても大切な目の前の人物をこの手の中からは失わない気がしたから。


「だからこの場ですぐには答えられねぇ」

「ゾロ…」

「もう少し時間をくれ」


言い終えると逸らされた翡翠色の瞳がまたサンジを映した。


「そんなには待たせねぇよ。もう少し考えたら……多分答えが出る気がする」


濁りの無い綺麗なゾロの目。
それにサンジはドキリと胸が大きく高鳴るのを感じながらも同じように見返した。


「…分かった」


そのまま静かに頷くと少しだけ苦笑いを浮かべる。
どうにもコイツの瞳には勝てねぇなと胸の中で呟きながらその笑みを深くした。


「だったら後少し猶予をやる代わりに…」

「なっ」


そして囁きながらサンジはまた顔を近付ける。
その行動に瞬間、嫌な予感がして僅かに後ろにのけ反ってしまうゾロの頭。


「もう一回キスさせろよ」


直感から逃げかける相手を捕まえるようにサンジがそっとゾロの頬に手を添えて甘く囁きかける。


「ぅっ…」


途端に一瞬戸惑った表情を見せる相手。
逡巡するように視線を僅かに俯けた、が。


「…‥っ」


だがそれもほんの数秒で。


「………あと一回だけだからな」


再度伏していた目線を上向けると顰めっ面で答えたら、既に近寄って来ていたサンジの顔に自然とゾロは目を閉じた。


「ん…」


すぐに硬い唇の感触が自分のそれを通して伝わる。
なぜか意外と嫌ではないその感覚。
それに…


「……」


この先どう転ぶのか、ゾロはなんとなく予想が付いた気がした。





END…?

あれ?なんだか続きますって雰囲気で終わりましたが話し続くんですか、これ…?
書いた私にもさっぱりぽんと分かりません(笑)
まぁネタが思い付いた時か、またはご要望があればまた書きたいと思います。
てかなぜに場所が音楽室なのさ。サンジの選択肢が分かんねぇ…
しかも終りやら結局告白ネタやらとゾロ誕に被ってらぁー(焦っ)
と、まぁこんな作品ですが如何でしょうか?勿論、返品可です。駄文で本当にすみません!
 

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