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短編よりも短い文達


シリーズ化しているものもあり


殆ど日雛です
けれどたまに藍雛 ギン雛
吉良雛あり
◆放棄 



*原作大人日雛


切欠なんか何でもいい。丸ごと一絡げに成長した俺達は、姉弟の境界も、幼馴染みの節度も男女の分別もすべてにおいて曖昧で、この複雑な感情の正体もよく解らないまま大人になった。

「あっはははははは、やめて、もうだめ、」
「誰が止めるか、散々くすぐってきたのはお前の方だぞ」
「ごめん、ごめんて言ってるのに、あっはははは、もうくすぐらないで、降参だから、」
「俺が降参してもやめなかったから却下だ」
「んぎゃあああ!あははは!」

何が切欠かわからない。たぶん最初は雛森が俺の腹を見て「太ったんじゃない?」と揶揄ったことから始まったと思う。それがいつの間にか擽りあいっこに発展し、今はさっき死ぬほど苦しめられた俺の逆襲のターンだ。姉弟も家族も幼馴染も男女も関係なく、俺と雛森であるだけの独特な関係。夜の密室に2人きりでも大したことは起こらない。
俺はあちこち転がりながら逃げる雛森を捕まえて脇をこちょこちょ。一度スイッチが入った彼女はチョンとつつくだけで笑い袋のように止まらない。

「うー…降参……もう、苦しい、」
「ずるいぞ雛森」
「うわああんん、だってほんとに息できない、」
「知るか、」
「あははは、やだ、あっははは、」

涙目で白旗を上げても追撃の手は緩めない。転がる雛森の細い手首を捕まえて畳に押さえつけ、首筋に息を吹きかける。瞬間「んっ」と擽ったそうに首を竦めて俺を見た。
高揚した顔に困ったような目、弾む息に乱れた胸元。


「………そんな目、どこで覚えてきた?」
「え?んっ、」

切欠なんか何でもいい。境界線もどうでもいい。むくむくと湧き上がった感情の理由を考えるのもまどろっこしい。


こいつが欲しい


その気持ちだけで俺達の形が出来上がる。


*衝動的に一線を超えてほしい

2020/11/16(Mon) 23:08 

◆遠距離おさなな 




*現パロ日雛



学校のこと、バイトのこと、部活や友達の話を取り留めなくつらつらと書かれた長文の最後、ついでのように「髪を切りました」とあった。「またね」も「バイバイ」でもなく、俺にとってはまったく要らない情報で締めくくられた桃からのメールは何だか少し意味深に思えた。



地元の幼馴染みは一個下の高3で、俺と同じ大学に入るべく受験勉強に励んでいる、はずなのだ。幼い頃からちょこちょこと俺の後をついて回り、シロちゃんシロちゃんと慕ってくれる可愛い妹分だから俺も彼女の受験を応援していたけれど今回のメールはなんだか少しニュアンスが違う。俺の気のせいか?いや気のせいじゃない、俺の勘は当たるんだ。
………こいつ、もしかして失恋……した?
いやいやいやいや、桃は俺を好きなんだろうが。だから同じ大学に行きたいってほざいてるんだろうが。なんで失恋なんだよ誰に惚れてたってんだよ俺以上にいい男があいつの周りにいるかっつうのいねぇだろが冗談は性格だけにしろ馬鹿野郎。
ここで俺は深呼吸。落ち着け、落ち着けよ俺。桃はただ髪を切ったという報告をしたにすぎない。実家の禿げた親父も1か月前に同じことを言っていた。何の変哲もない日常だ。
俺の脳裏に数ヶ月前のお団子頭が風船のようにプワプワ浮かぶ。しかし次の瞬間風船は弾けて代わりに現れたのはバリキャリ然としたショートの桃だった。濃い色のルージュをひいて野太い眉毛を整えて別人のようになった桃は俺になんか見向きもしない。「シロちゃんごめんね、あたしもっとお金持ちでカッコいい人がタイプなの」などとほざきやがる!
空想でも許し難いぜ桃!!!


「なんだよ…ほんの数ヶ月会わないだけで浮気かよ(付き合ってない)お前の気持ちはその程度だったのかよ(好きとも言われてない)」

くそお!今一度目を覚まさせてやる!
俺はかつてないほど高速で返信した。



>おい桃!明日の朝一で帰るから首洗って待ってろよ!





*大学の友達との会話でもやたらと「桃が〜」「桃だったら〜」を連発して女友達に引かれるがやさんです

2020/11/15(Sun) 23:45 

◆こんなんをポツポツと 



*原作大人日雛


こんなこと虚しいだけだと雛森は言う。
色んなやつに騙されたり傷つけられたりした俺達はそうするのが当たり前のように肌を重ねるようになった。お互いの身体に残る傷痕の分だけ心も傷ついて、身を寄せ合うことで2人の間に入りこもうとする隙間風を防いできたのだ。それを雛森は虚しいという。とてもやるせ無い表情で。

「こんなこといつか終わりにしないとね」

着物に袖を通して乱れた髪を梳かしつける。あまりにも突然切り出すから俺は彼女が何を言っているのか分からなかった。
雛森を抱いた日はよく眠れる。腕の中の柔らかい生き物が俺に暖を与えてくれるみたいにほかほかと胸の中から温まる。
俺は彼女みたいに虚しいとは思わない。
終わりなんて考えたこともなかった。永遠に続くとさえ思っていた。

「雛、」
「あたし達は傷の舐め合いをしてるだけなんだよ」

だから発展も未来もない、そう言い切って立ち上がる。俺の方を見もせずに背中を向けて。

「おい待てよ雛森」
「次に会う時は昔のあたし達でいよう。こんな……歪むまえの2人に戻って」

冷たく吐いて彼女は背中を向けたまま戸に手を掛けた。一方的な言葉に俺の頭は熱くなる。裸のまま布団を跳ね飛ばし細い影を追いかけた。
なんだそれ、お前はずっと俺達の関係をそう思ってたのか?虚しいってなんだ、歪むってどうなんだ。傷の舐め合いだと?ふざけんな。

「待て雛森!」

いつもいつも碌でも無いもんばっか置いていきやがる。
完全に血が上った頭で俺は馬鹿な女を追いかけた。




*あれ?ひつ裸のまんま?猥褻罪で捕まるねこりゃ。
こんな身体の関係から始まる2人が性癖です。何回でも擦りたいネタ。

2020/11/04(Wed) 00:03 

◆魔性の君 



*原作大人日雛


雛森が任務で腰を痛めたという。心配する気持ちはおくびにも出さず揶揄い半分、説教半分で彼女の部屋を訪れた。

「………………何してんだ?」
「あ、日番谷君いいところに。手伝ってぇ」

部屋の真ん中に足を投げ出して不自然極まりない体勢。両手に足袋を持って唸っている様から察するに、腰が痛くて一人では足袋も履けないらしい。俺は小言を言うのをやめて雛森の手から足袋を取った。

「はぁ……貸せ、履かせてやる」
「あはは………頑張ってたんだけどどうにも痛くて……」
「そんなに酷いのか?」
「座ると痛い。でもちゃんと四番隊で湿布とお薬貰ったから安心して」
「別に心配なんかしてねぇよ」
「ふふふ」

何が「ふふふ」だ。その見透かすような態度が気に入らねぇ。足袋1つ履けないくせに嬉しそうにすんじゃねぇ。
俺は雛森の細い足を片足ずつ持って膝に乗せると子供に履かせるみたいに足先から足袋を被せていった。
細い足は俺の掌を少しはみ出るくらいの小ささで、足首なんか小鹿かと思うくらいに頼りない。昔は俺より大きかった雛森の足は細い。細い細い、両手で簡単にへし折れるほど細い。だから俺の胸も変にざわつくんだろう。

「ふふ、なんだかシンデレラみたい」
「あ?」
「知らない?現世で有名なお伽噺だよ。王子様が硝子の靴を履かせてくれるの」

知っとるわ。継母と継姉達に苛められてる少女が魔法使いの力で変身し、なんやかんやで王子とくっつく話だ。硝子の靴なんて随分機能的でない素材だなといつも思うやつだ。でもそこで「あれ?」と思う。

「つうことは俺が王子で……」
「勿論あたしがシンデレラよ」
「おっ……、」

しれっと言ってのけた雛森に一瞬で顔が熱くなった。
馬っ鹿じゃねぇかのか!?お前、あれ、最後は王子とシンデレラが結婚すんだぞ!?その辺理解して言ってんだろうな!?俺とお前で例えたら、つまりそういう感じになるじゃねぇか!
顔から火が出そうなほど焦った俺だが正面の雛森は汗1つかかずにニコニコしてる。
そうか、そうだよな、こんな時いつも慌てるのは俺だけだよ。お前が鈍感なのか俺が聡いのか判らないが一方通行なのだけははっきり判る。胸のざわつきはますます膨らみ面白くない感情へと発展する。俺は些かぶっきらぼうに雛森の足を離した。

「おら、履けましたよシンデレラ」
「ありがとう王子さま」
「立てるか?」
「うん………っしょ、」

ふらつきながら雛森が立つ。不安定に揺れる身体に手を貸して、介助する素振りでバランスを崩してやればいとも簡単に倒れこむ。

「ふわ、」
「っと、」
「ご、ごめん、」

ぽすんと腕の中に落ちてきた彼女は慌てて身体を引いたが俺はそれよりも強く早く背中に手を回した。純な男心を弄んだ代償はデカいからな。

「あ、あの、日番谷君?」
「お前はシンデレラっつうより魔女だろ」

知ってるか?魔女の力は悪魔から借りているってことを。

「借りもんの力で俺を惑わしてんじゃねぇ」
「きゃ、」


背中に回した手を引き絞る。足が細けりゃ身体も細い。雛森はすっぽりと腕の中に収まった。
今日だけだ、と呟いてシンデレラの化けの皮を剥いでやった。



*腰痛いんすよ。

たくさんのコメントありがとうございます!!佐野は幸せ者です(泣

2020/10/31(Sat) 21:06 

◆少年陰陽師パロ 



*朱雀=ひつ 天一=雛



胸に大剣を受け瀕死の重傷を負った我が主は桃の術によって一命をとりとめた。呼吸をしているのが不思議なほどの大傷は綺麗に塞がり、色を無くした頬には赤みが戻った。長い夢でも見ていたかのようにゆるゆると起き上がった主の姿に同胞達は皆歓喜した。良かった良かったと安堵の息をつき胸を撫で下ろす、そんな仲間の姿を桃が見たらきっと幸せそうに微笑むのだろう。



「桃は……?」

襖を開け、褥に眠る恋人の元に膝をつく。付き添いの看護人に彼女の様子を問えば静かに首を横に振った。
朝日が昇るが如く回復した主と入れ代わりに崩れるように倒れた彼女。桃の使う術は「移し身の術」だ。他人が受けた呪詛や傷を自分のものにして浄化する。主が受けた大傷は今そっくりそのまま桃に移ったのだ。彼女はこうしてゆっくりゆっくり治していく。泥水を我が身に染み込ませ、清浄な飲み水に変えるように静かに時間をかけて戻していく。

まるで死人だ……。

辛うじて息をしている桃に触れれば僅かに瞼が動いた。生きていることにほっとする。

「………だからやめろと言ったんだ……」

主は俺達の生きる意味そのもの。だから彼女は主を救うことに躊躇いはなく、最強にして最凶と謳われる俺達の第一等も桃に術を使うよう頭を下げた。けれどそんな同胞達に俺は噛みついた。
だってそうだろう?病にしろ怪我にしろ、災厄を引き受ければ今度は桃の身が危うくなる。皆は主を大事に思うが俺にとっちゃ彼女の方が大切なんだ。主人を救う為なら桃が死んでも構わないのか?
握った拳に力が入る。どうしようもない憤りに苛まれる。

「シロ……?」
「桃、気がついたか?」
「………………泣いてるの?」

泣いてねぇと答えたら、桃は僅かに微笑んだ。血の気の失せた顔、か弱い呼吸、動かぬ手足。愛する者が死の淵に立っているというのに俺は何もできない。

「……泣か……ないで………直ぐ治すから……」

そして眠るように目を閉じた。
堪えていた生温かいものが頬を伝う。拳の上に滴が落ちる。
この拳は主を守る力はあっても恋人を救う力はない。


俺は無力だ。








*少年陰陽師の版画展があると聞いてうわーってなりました。
十二神将朱雀と天一のCP好きです(あと昌彰)

2020/10/28(Wed) 23:00 

◆onliestの日番谷君 


*とあるヒート時のお話




首筋には勿論、肩も腕も背中も尻も太股も、全身歯形とキスマークだらけ………とんでもない悪魔がいる。
精も魂も尽き果てたように眠る桃を見るといつも自己嫌悪に陥るが今回は特に酷い。途中からマジ泣きされたように思うが記憶が曖昧でよく覚えていない。
ヒート中の俺は毎度のことながら最低だ。素面というか、ヒート期間外だと幾分ましだが桃のヒート初日はサッカー日本代表が優勝した時のサポーターくらい狂喜乱舞してしまう。いや、もっと酷いな。地球防衛隊の拘束から解放されたゴジラ並みにはしゃいでしまうのだ。とにかく気持ちよくて止まらないんだから仕方ない。ひたすら彼女と溶け合うことを目指して腰を振っている自分を思い出すと野生すぎて頭を抱えてしまう。

「う………ん………」
「………………桃…………ご、」

こうやって眠る彼女に何回謝っただろう。もう謝るのも気が引けるようになってきた。いまだ目覚めぬ桃は泣きすぎて目尻が赤く爛れたようになっている。俺は謝る代わりにそっと彼女に寄り添い頭を抱えこんだ。
今回のヒートは特に手加減できなかったように思う。なんでだろう?なんだったっけ?確か始まったのは4日前だ。そうだ、俺が誘発してやったんだった。草冠を褒める桃にむしゃくしゃして苛めてしまった。ガキ臭い感情だけれどやってることはたちが悪い。それもこれもこいつが余りにもぽやぽやしててこちとら気が気じゃないからだ。

「…………………結婚してぇ……」

やべ、思わず本音が漏れちまった。こいつを手元に置くためのあらゆる手段として部署移動、辞職転職、監禁、仮病etc…と色々あるが法的手段が最も有効だろう。
常々考えてはいたんだ。仕事なんか辞めさせてずっと家に居させるにはどうすればいいかを。道を歩けばトラブルにぶち当たるほどΩの一人歩きは危険に道溢れている。電車や暗闇で襲われる事件は頻繁すぎてニュースにもなりゃしない。なのにこの腕の中の兎ときたら平気で飲み会に参加するわ遅くまで残業するわ、自分から襲われに行ってんのかと思うくらいだ。こいつを家に縛りつけて外出を控えさせる最良はないかと熟考したら、俺が養えばいいんじゃねえかと辿り着いた。
一日中この部屋で過ごして俺の帰りを待っていてくれたら……………扉を開けたら裸エプロンの桃が出迎えてくれたら………。
そんな最高の妄想を描いたらついポロリと口から出ちまった。


「殆ど監禁じゃねぇか、やべぇな俺………」
「………監…………禁……………???」


不思議そうな表情をした桃がひょっこりと顔を出した。




*コメありがとうございます!!

2020/10/26(Mon) 06:16 

◆死ネタだけど死ネタじゃないです 



*未来日(雛)


綺麗に切り揃えられたおかっぱ頭が重力に逆らえずにかくんと落ちた。つきたての餅みたいな頬、絹糸のような黒髪、子供特有の匂い。冬獅郎は傾いでいく小さな身体に手を添えてゆっくりとその場に寝かせてやった。
さっきまで騒いでいたと思ったらもう寝てる。箸を握りしめたまま寝落ちるなんて大人には難しい芸当だが僅か2歳の幼児には難しいことではないらしい。昼間の疲れが押し寄せたのかおかっぱ頭の小娘は夕飯の途中で寝入ってしまった。

「おいこら、んなとこで寝るやつがあるか」

口の周りについた米粒を取り除いてやりながら返事を期待するが返ってくるのは健やかな寝息だけ。冬獅郎は仕方なく紅葉の手から箸を抜き、汚れた顔を拭いてやった。

「ちゃんと布団で寝ないと風邪ひいちまうからな」

言いながら、まだ歯みがきしてねぇな、と思うもこんなに気持ち良さそうに寝ている子を起こすのは忍びなくて「ま、いいか」と膝裏と背中に手を回し小さな身体を持ち上げた。さらさらの黒髪がなんの抵抗もなくさらりと下に垂れ下がる。

「冬獅郎も風呂に入っておいで」

祖母が水屋で片付けをしながら冬獅郎に声をかける。それに「ああ」と返事しながら桃の忘れ形見を布団にそっと下ろした。頭を撫でると子供の体温が優しく伝わる。


5年前、突然瀞霊廷を去った桃は流魂街でひっそりと暮らしていたが3年前同じ地区の男と結婚して子供を産んだ。不幸なことにその子が3つにならぬうちに両親共に不慮の事故で亡くなってしまい今は年老いた祖母がその娘を育てている。かつて冬獅郎を育ててくれたように。
桃とはずっと音信不通だった冬獅郎は彼女の結婚も出産も知らない。桃が瀞霊廷からいなくなるひと月前に会ったのが最後だ。桃が崖から落ちて亡くなったと祖母からの連絡で初めて彼女が家庭を持っていたことを知ったのだ。
この5年間、どんなに祖母が帰ってこいと言っても帰らなかったのは桃に会うのが恐かったからだ。また、祖母の前で昔の二人のように振る舞う自信も無かった。もう桃には一生会わないと決めていたのに、まさかの再会は白い顔をした死人だった。傍らには桃の生まれ変わりかと見紛うほどそっくりな幼子を残して。



「今夜は泊まっていくかい?」
「いや、帰るよ。3日後にまた来る」
「無理して来なくていいんだよ?」
「有休が溜まってるから大丈夫だよ」

冬獅郎は丸く小さな頭から手を離し、ゆっくり立ち上がると羽織に袖を通してそのまま戸口へ向かう。

「起きた時、お前がいないと泣くかもねぇ」
「…………………今度来る時はこいつの好きな菓子を山ほど持ってきてやるよ」
「きっと喜ぶよ」
「……ふ、じゃあ、おやすみ」

最後に一度だけ振り向いて、布団を盛り上げる小さな山に目をやった。
桃が残した大切な命。
今度は絶対に死神なんかにさせない。

戸を開けると冬の気配を纏った冷たい風に包まれた。家の中に風が入らぬよう素早く閉めて宿舎を目指す。
新たな生き甲斐に冬獅郎の足は力強かった。


*ここから始まる日雛話も書いてみたいです。
コメありがとうございます〜〜元気たくさんいただいてます😄😄

2020/10/09(Fri) 00:33 

◆onliestの日番谷君 



もどかしい。こんな面倒臭い女は初めてだ。俺がこんなにも意思表示をしているのに頑なに壁を造る。
優秀なαを掴まえるためα漁りに躍起になるΩもいると聞くが俺の目の前に立つΩはそれとは真反対に位置するらしい。出来るだけ目立たず控えめで堅実な人生を望んでいるのが様々なシーンで見て取れる。ガツガツと厚かましく自惚れが激しいのは嫌いだが、もう少し自分に向けられる感情に自信をもってほしい。

俺がわざわざ待ってる意味を察しない。
車に乗ってもいいのかと問う。
部屋にあがるのも躊躇う。
引いてはあろうことか俺に女の影を疑うだぁ?
ふざけんな、自慢じゃないが俺は遊びで女を抱いたりしない。勿論男もだ。
雛森の言葉に一瞬カッとなった俺だけど、よく考えてみれば俺は彼女に何一つはっきりしたことを伝えていないことに気がついた。がしがしと髪を掻き毟って焦れったさを散らし、口下手な自分を軽く嫌悪する。できれば察してほしい、なんて甘えてるよな。
雛森に対する気持ちのデカさをあれだけぶちまけてんだから自信を持って信じてほしい。ったくなんでそんなに控えめなんだ、と思ったが相手の好意に自信のあるΩの方が稀なのだと思い当たる。Ωに向けられる感情は好意より欲望が勝るのが専らだ。

「あたし日番谷君が初めてだよ、全部、全部日番谷君が……」

その言葉が嬉しくて、必死にすがりついてくる彼女が愛しくて、俺は子供がはしゃぐみたいに全身で雛森を感じた。
きっと理屈なんかじゃない。他じゃだめだ。たぶん初めから落ちていた。初めての日、強引に押しかけたのは誰かに盗まれる前に奪いたかったから。雛森の笑顔だけでなく色んな顔を独り占めしたかった。
彼女に惹かれる理由を探せばそれが一番しっくりくる。素直に気持ちを現してくれた雛森を一生離さないと心に決めた。


何度目かの絶頂を味わい雛森の横に倒れこむ。とっくに果ててる彼女の項が目にはいった。
噛みてぇ…………。
けど、それだけは彼女の意思を尊重したい。

仕方なく、鬱憤を晴らすかのように俺は彼女の肩口に歯を立てた。



*雛さんの身体はきっと噛み痕と鬱血痕で酷いことになってると思います
コメありがとうございます〜😂😂

2020/10/04(Sun) 06:44 

◆onliestな日番谷君 




くらくらする。
雛森を取り巻く何もかもに。

仕事は楽だ。数学の数式みたいに正解が明白だから。要は利益をあげりゃいい。
友人関係だって学生でなくなれば不必要な付き合いは切り捨てられる。
α性もΩに遭わなきゃ日常生活に支障はない。元々希少種だから遭遇する確率は高くはないし、もし出会ったとしても処置が早ければ回避できる。またはさっさと番っちまうか。
けれど人生そんなに計画通りにいくわけがなかった。これは俺の読みが甘かったのか、それとも運が悪いのか。迷うまでもなく後者だろう。
あいつと出会っちまった時から俺の人生設計は粉々の木っ端微塵だ。世界を回してるつもりがたった1人の女に振り回されて、人としての理性も危うい。
こんなはずじゃなかった。




「な、なに…?」
「お前、いったい、」

彼女から漂う匂いがいつもと違う。甘くて優しい香りを期待してすれ違った俺は、つん、と鼻に来る匂いに毛を逆立てた。
なんだこの匂いは?雛森の匂いじゃない。俺のでもない。となれば…。
他のαか!?
雛森に俺ではない誰かの影が見えた途端、頭に血が昇った。
誰が彼女に手を出した?こいつは俺のもんだ。指一本、髪の毛一つとして分け与えられるもんじゃない。ましてや触れるなんて、匂いを残すなんて………こんなにも殺意を抱いたのは初めてだ。今すぐ俺の血で洗い流さなきゃ気が治らない。
テリトリーに侵入した余所者は即刻追い払わなければ。雛森が得体の知れない輩に喰われる前に護らなければ。
だってお前は俺のものだろう?

「ちょ、ひつ、」
「いいから来い!」

早く早く、早くこいつを仕舞わなければ。俺の血で塗り替えて相手のいるΩだと知らしめないと。それになにより彼女の身体に刻みたい。
もう俺の他に選択肢はないのだと。


オフィスの喧騒を後にして、俺はお仕置き部屋を模索した。


*ネジが何本かぶっとんだ日番谷君

2020/09/19(Sat) 23:33 

◆onliestの日番谷君 




あ・い・か・ぎ・つ・か・え・YO!


合鍵使え合鍵使えなんで使わねぇんだ渡した意味がねぇじゃねぇかお前昨日休みだっただろ思っきし使うチャンスあっただろうが他に用事があったとは言わせねぇぞ俺はバッチリ聞いたんだ「昨日は一日中家でゴロゴロしてました」ってなぁ!

「ちっ!」
「ひ、日番谷君、今日はどうしたんだい?なんだか朝からイライラしているみたいだけど」

尖った気持ちを仕事にぶつけたら上司から恐る恐る声がかけられた。この状態の俺に触るなんてやっぱり上司だな。ダテに年はとってない。

「いえ、何でもありません。これから外回り行ってきます」
「そ、そう、ご苦労さん。帰りは?」
「すんなりいけば夕方には帰ります」
「あんまり遅いようだとそのまま帰っていいからね」
「はい、行ってきます」

俺は必要書類を鞄にしまうと立ち上がった。ついでのようにマケ部のあいつを見ると、喉が渇いたのかペットボトルに口をつけているところ。ピンクのラベルから察するにたぶんミルクティーだろう。この間も同じのを飲んでいた。
まぁた、あんな甘いもん飲みやがって。
今すぐお茶と取り替えてやりたい衝動を抑えて俺はフロアを出た。
エレベーターに乗り、降下しながらスマホを出してアプリを開く。お母さんと言われようがお父さんだろうが言ってやる。甘いものは程々にしろってな。

「………」

しかしスマホを手に俺ははた、と気がついた。
もしかして美味いケーキがあると言えばほいほい付いてくるんじゃねぇか?
いやいや、いくら雛森でも大人だぞ?今時子供でもそんな手に引っかからねぇ。でも雛森だからな。試すだけ試してみるか?


【美味いケーキを貰ったんだが、今夜うちに食べに来ないか?】

なにこの文?陳腐か!!
あまりの滑稽さに最後の送信が押せない。こんな誘い文句遅れるか!と思いながらも万に1つの可能性を捨て切れなくて親指が画面の上で迷子になる。
送る?送らない?誘う?誘わない?でも今のままじゃ雛森は絶対合鍵を使わないだろう。
あー………もう、俺をこんなに悩ませるなんて、あいつめ!












「あの…………降りないんですか?」





*エレベーターとっっっっくに着いてた
コメありがとうございます😂😂😂お返事は後ほどさせていただきます

2020/09/10(Thu) 22:55 

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