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短編よりも短い文達


シリーズ化しているものもあり


殆ど日雛です
けれどたまに藍雛 ギン雛
吉良雛あり
◆onliestな日番谷君 




くらくらする。
雛森を取り巻く何もかもに。

仕事は楽だ。数学の数式みたいに正解が明白だから。要は利益をあげりゃいい。
友人関係だって学生でなくなれば不必要な付き合いは切り捨てられる。
α性もΩに遭わなきゃ日常生活に支障はない。元々希少種だから遭遇する確率は高くはないし、もし出会ったとしても処置が早ければ回避できる。またはさっさと番っちまうか。
けれど人生そんなに計画通りにいくわけがなかった。これは俺の読みが甘かったのか、それとも運が悪いのか。迷うまでもなく後者だろう。
あいつと出会っちまった時から俺の人生設計は粉々の木っ端微塵だ。世界を回してるつもりがたった1人の女に振り回されて、人としての理性も危うい。
こんなはずじゃなかった。




「な、なに…?」
「お前、いったい、」

彼女から漂う匂いがいつもと違う。甘くて優しい香りを期待してすれ違った俺は、つん、と鼻に来る匂いに毛を逆立てた。
なんだこの匂いは?雛森の匂いじゃない。俺のでもない。となれば…。
他のαか!?
雛森に俺ではない誰かの影が見えた途端、頭に血が昇った。
誰が彼女に手を出した?こいつは俺のもんだ。指一本、髪の毛一つとして分け与えられるもんじゃない。ましてや触れるなんて、匂いを残すなんて………こんなにも殺意を抱いたのは初めてだ。今すぐ俺の血で洗い流さなきゃ気が治らない。
テリトリーに侵入した余所者は即刻追い払わなければ。雛森が得体の知れない輩に喰われる前に護らなければ。
だってお前は俺のものだろう?

「ちょ、ひつ、」
「いいから来い!」

早く早く、早くこいつを仕舞わなければ。俺の血で塗り替えて相手のいるΩだと知らしめないと。それになにより彼女の身体に刻みたい。
もう俺の他に選択肢はないのだと。


オフィスの喧騒を後にして、俺はお仕置き部屋を模索した。


*ネジが何本かぶっとんだ日番谷君

2020/09/19(Sat) 23:33 

◆onliestの日番谷君 




あ・い・か・ぎ・つ・か・え・YO!


合鍵使え合鍵使えなんで使わねぇんだ渡した意味がねぇじゃねぇかお前昨日休みだっただろ思っきし使うチャンスあっただろうが他に用事があったとは言わせねぇぞ俺はバッチリ聞いたんだ「昨日は一日中家でゴロゴロしてました」ってなぁ!

「ちっ!」
「ひ、日番谷君、今日はどうしたんだい?なんだか朝からイライラしているみたいだけど」

尖った気持ちを仕事にぶつけたら上司から恐る恐る声がかけられた。この状態の俺に触るなんてやっぱり上司だな。ダテに年はとってない。

「いえ、何でもありません。これから外回り行ってきます」
「そ、そう、ご苦労さん。帰りは?」
「すんなりいけば夕方には帰ります」
「あんまり遅いようだとそのまま帰っていいからね」
「はい、行ってきます」

俺は必要書類を鞄にしまうと立ち上がった。ついでのようにマケ部のあいつを見ると、喉が渇いたのかペットボトルに口をつけているところ。ピンクのラベルから察するにたぶんミルクティーだろう。この間も同じのを飲んでいた。
まぁた、あんな甘いもん飲みやがって。
今すぐお茶と取り替えてやりたい衝動を抑えて俺はフロアを出た。
エレベーターに乗り、降下しながらスマホを出してアプリを開く。お母さんと言われようがお父さんだろうが言ってやる。甘いものは程々にしろってな。

「………」

しかしスマホを手に俺ははた、と気がついた。
もしかして美味いケーキがあると言えばほいほい付いてくるんじゃねぇか?
いやいや、いくら雛森でも大人だぞ?今時子供でもそんな手に引っかからねぇ。でも雛森だからな。試すだけ試してみるか?


【美味いケーキを貰ったんだが、今夜うちに食べに来ないか?】

なにこの文?陳腐か!!
あまりの滑稽さに最後の送信が押せない。こんな誘い文句遅れるか!と思いながらも万に1つの可能性を捨て切れなくて親指が画面の上で迷子になる。
送る?送らない?誘う?誘わない?でも今のままじゃ雛森は絶対合鍵を使わないだろう。
あー………もう、俺をこんなに悩ませるなんて、あいつめ!












「あの…………降りないんですか?」





*エレベーターとっっっっくに着いてた
コメありがとうございます😂😂😂お返事は後ほどさせていただきます

2020/09/10(Thu) 22:55 

◆onliestの日番谷君 





ぼんやりと目を開ければ部屋の中は真っ暗で。疲れた身体と真っ白な頭、焦点の合わない目でぼんやりしてるとだんだん目が慣れてきたのか白い天井が見えてきた。

ああ……そうか、ここは雛森の………、

そう気づいた途端、心臓が飛び出した。
彼女はどこだ!?

「雛森!!」
「ん……」

全身で跳ね起きた俺の横で死んだように眠る女。ほんの数時間前まで玩具のように弄んでしまった同期だ。
いた…………。
ほぅ、と安堵の息をつき、再びベッドに脱力する。
それから、ちゃんと隣にいたことを褒めてやりながら今一度しっかりと腕に抱いた。顔にかかった黒髪を指でそっと避けてやれば深い寝息が胸に伝わる。項を守るカラーにいくつか傷がついているのはたぶん俺のせいだろう。彼女を突き上げながら項に噛みつきたい衝動を首輪にぶつけた。やり過ぎた感は否めない。無数についた細かい傷をもし誰かに見られたら訝しがられるのは雛森だ。新しいのを買ってやろうか。いや、それよりも番ってしまえば済む話だ、と考えて苦笑した。
……………………馬鹿か俺は。それは最初に断られただろが。
堂々巡りの思考に頭を振る。

季節ごとの逢瀬はもう何度目だろう。相も変わらず俺達は人目を忍ぶ関係だ。始めはそれでいいと思っていた。周りからとやかく言われるのは嫌いだし俺がαと知れれば余計なΩが言い寄って来るかもしれない。流石に雛森に会社を辞めてくれとは言えなくて、ならば共生しようと提案したが……………………………秘密にしなくてもいいんじゃないか?
最近はそんな気持ちが膨らむ一方だ。

セクハラの軽重は様々なれど雛森にはそういう相手がちゃんといると示せたら彼女に絡みつくいやらしい目は減るだろう。それとも身体だけの関係だと知られる方がリスクは高いだろうか。
なら、ちゃんと付き合えば……………………って、雛森はそんなこと望んでないだろが。

「………………」
「………う…………ん………」
「…………………暢気に寝やがって。もっかいするぞ」


望んでなかった。俺も、最初は。


*もやもや日番谷君

2020/09/07(Mon) 06:30 

◆onliestの日番谷君 



にこにこにこにこ………………仕事の手間を増やされてんのに何故笑えるのか不思議だ。しかもあんないい笑顔で。
あいつを見てると人の表情も売り買いできる商品にできるんじゃないかと思える。あのスマイルがゼロ円?安すぎるだろ、値段を付けろ、絶対買いたい親父がいるはずだ。それともそれはボランティアか?施しか?

マケ部に所属する雛森は俺以上に営業の才能があると思う。あの人の良さ全開な笑顔に癒されない者はいない。取引先の疑心暗鬼で凝り固まった親父がもしも雛森と商談することになったなら、あの笑顔と素直過ぎる反応に毒気を抜かれることだろう。喩え騙されたり損をさせられたりしたとしても、きっとどこかから救いの手が差し伸べられる、そういうキャラだ。俺とは大違いだな。

マケ部の連中は何故かいちいち手を振り合う。厳つい強面の男もその図体に似合わず人懐っこい仕草をする。
職場にそんなコミュニケーション必要か?笑ってばかりじゃその内失敗しちまうぞ。
ほんとにまったくなんなんだ。俺といる時は殆ど笑ったりしないくせに仕事場だと満開じゃねぇか。しかもしかも、奢られるだぁ?お前それ解ってんのか?男が食事を誘うってのは下心を持ってるかもしれねぇんだぞ。
不用心、無防備、隙だらけ。俺が何度、口を酸っぱくして言っても学習しない。くそ、またヒィヒィ鳴かせてやる。思いきり焦らし、泣いて懇願するまで与えてやらない。


「ん?1枚おかしい?」

マケ部から送られてきた修正版が1枚飛んでる。ったく、ほらな、へらへらしてると間違えるんだ。
俺は端っこの部署をギッと睨み、ふわふわ頭の同期を目指した。


*この男は嫉妬深いぜぇ

2020/09/02(Wed) 22:30 

◆押しかけ亭主と桃ちゃん 



*大学生×OL(桃ちゃん視点)


疲れた身体を引きずりながら会社のエントランスホールを歩いていたら、何やら出入り口が騒がしい。
会社の玄関を出ると直ぐ大通りに面した歩道なのだけれど、そのガードレールにもたれながら佇む人影が約1名。辺りの視線を攫いながら、夜闇に負けることなく銀色の髪が光っている。

はわわわ、日番谷君だ……!

青くなりながら焦る桃の耳に、ひそひそと女子社員の囁きが届く。「誰あれ?かっこいい」「もしかしてうちの誰かを待ってるのかな」「声かけて見る?」等々。いつもながら安定のイケメン評価に桃の足は鉛のように重くなった。さっきまではなんとか引きずってでも前へ進んでいたのに彼だと気付いた時点で一歩も動かない。動くのを拒否しているみたいだ。
こら足動け!このままじゃ帰れないでしょうが!
短い足を叱咤するけど危険を察知した本能には抗えない。このままのこのこと出ていけば確実に捕獲されてしまう。
そうだ!裏口!そっちから帰ろう!
ぽん、と手を打って踵を返す。この案には短い足も納得らしく、速やかに反転したのち全力ダッシュ……と、背後で自動ドアが開く。

「よぉ、ハニー」

ビシィ!と桃の身体が凍った。辺りが騒めくのもなんのその、銀髪の彼はポケットからスマホを取り出すとパシャリと1枚。

「くたびれたOL姿ってのもなかなかそそるな。迎えに来たぜ、桃」
「あ、う、ひ、日番谷君……」

桃の幼馴染みはニヤリと笑うとがっしりと桃の首に腕を回し「こいつがいつもお世話になってます」と周りの観客にご挨拶。お前は保護者か?いや、きっとこれはヒモ男と飼い主の構図だろう。それかホストと貢ぐ女。

「さ、俺達の家へ帰ろうぜ」
「ひぇ、」

ふっと耳元で囁かれ、桃はぞくりと飛び上がった。
ああこんなことなら最初にガツンと言っとくんだった。甘い顔をしたばっかりにつけ上がらせてしまった。もはや桃の部屋は桃の部屋ではなく魔の冬獅郎の巣と化している。
ずるずると引きずられながら後悔してももう遅い。今日も桃はこの幼馴染みの餌食になるのだ。

せめて早めに寝かせてもらおう……




*バス待ち中ー。
こんな2人も書きたいてす。

2020/09/01(Tue) 19:44 

◆onliestの日番谷君 




「今日飲みにいかない?」
「…………」


同じ部署の上司や先輩社員に誘われて、すんなり頷くことができない俺はサラリーマンの素質ゼロだ。いや、即座に断らなかっただけでも上出来か?

「あー……」
「なあに?用事でもあるの?」

用事はないが行きたくない、なんて言ったら心象最悪になるのは必至。さてどうしたもんかと言葉を捜している間に細い腕が左腕に絡みつき、猫撫で声と共に俺を揺する。

「たまにはいっしょに飲もうよぉ、あたしまだ1度も日番谷君と飲んだことないんだよ?」
「…………」

それがなにか?
先輩社員だということを忘れて睨んでしまうと「ひっ、」と彼女は後退りして慄いた。いかんいかん。

「すみません、今日は先約があって……」
「あ、あ、そうなの?じゃあ明日は?」
「………ちっ!」
「舌打ち!?」

人がやんわり断ろうとしてんのに食い下がってくるんじゃねぇ!
思わず舌打ちをしたら更に引かれた。俺はつくづく営業向きじゃねぇ。

「あ、あの、日番谷君……?」
「まぁまぁ、日番谷はきっと彼女が家で待ってるんだよ。邪魔しちゃ悪いぜ」
「あ、いえ、そんな、」
「また今度誘うよ」
「すみません……」

尚もしつこく誘おうとした女子社員をもう1人の先輩が止めてくれ、俺は救われた。てめぇ、もっと早く止めろっつうの。
理由は違うが断りの好機に俺は曖昧に笑い、この話は終わりを告げる。女だからって飲みハラが許されると思うなよ。
ったく、煩わしいったらありゃしない。腕に香水だか化粧品だかの匂いがまだ着いてるみたいだ。鼻に残る甘ったるい匂いは毒々しくて俺は静かに深呼吸をした。新鮮な空気が吸いたい。女は何故あんなに臭いものを着けたがるんだろう。鼻が麻痺してるとしか思えない。
そんな俺の耳にマケ部の連中の声が届く。

「雛森ぃ、四番、庶務から内線ー」
「はぁい」

仲間の声に同期が返事して電話を取る。ざわつくフロア内で彼女の声は直ぐに埋もれて聞こえなくなるが俺の耳は澄んだソプラノをしつこく拾い集めた。
雛森の声は小鳥みたいだ。静かな森の奥深く、長閑に囀ずる鳥を思わせる。
けど、俺は彼女の声が一変するのを知っている。
別人のように甘く鳴いて背中に爪を立てるのを知っている。
髪を振り乱して俺の上で乱れる様を思いだし、仕事中だというのに半身が疼いた。
くそ、考えるな。仕事に集中しろ。
唇を噛み、手にしたファイルを握ったらほんのり花の香りがどこからともなく漂って。
この匂い…………
たぶん、それはとても微量で、きっと俺以外誰も気づいていない。αを惑わす危険な香りに俺は雛森を振り返った。数ヶ月前の出来事が鮮やかに蘇る。
もしまた前回のようなことか起こったら………他のαが気づいたら………。

「俺ちょっとコピーとって来ます」

居ても立ってもいられなくて足を踏み出す。
俺はあいつの危険探知機かよ。





*日番谷君の鼻と耳は優秀

2020/08/25(Tue) 23:17 

◆onliestな日番谷君 



ひでぇ顔………
夢から覚めて最初の感想がそれだった。

瞼を開けて目覚めてみれば目の前には死んだように眠る同期の顔。お世辞にも可愛いとか天使などと言う言葉は出てこない。泣きすぎて瞼は腫れ、目の下は隈ができていた。精魂尽き果てた様子だけでも哀れだが身体中あちこち鬱血痕と噛み跡だらけな様がもはやDVを思わせる。特に首回りの傷が酷い。
て俺か、俺がやったのか。己の鬼畜な所業に頭が痛い。

社内では専らΩとして有名な雛森だがヤロー共の間では愛されキャラとして人気だったりする。見た目清純、なのにΩというギャップがいいんだとか。ミスコンでもあるまいし、とバカにしていた俺だがこのヒート中の彼女はギャップなんてもんじゃなかった。
泣きそうな顔で強請る、苦しげにしがみつく、手で拒絶しながら締めつけて離さない。矛盾した行動ばかりの雛森に俺は翻弄されイかされっぱなしだった。

涙の跡が残る頬に指で触れる。雛森はピクリとも動かない。
Ωだというからてっきりもう経験済みだと思ってたのに彼女は処女だった。初めてなのに随分手荒に抱いてしまったことを後悔する。
なんせ俺も余裕なかったからな。
悲しい童貞の性を笑うなら笑え。こんなことならちゃんと練習しとけば良かったと思わなくも無いが如何せん今まで女に触手が動かなかったんだから仕方ない。

今度は上手くしてやろう。
怖がらせることなく痛みもなく、安心して気持ちよくなれるよう優しく抱こう。



って、何を考えてんだ俺は。また次があると思ってんのか?
自惚れた思考に恥ずかしくなった。
いやでもまてよ、もし、こいつと番えば次どころかずっと優しく抱いてやれる。今回ので要領は掴んだんだ、次は苦しくさせない。勿論彼女が受け入れてくれればの話だが。
雛森が眠りながら激しくしゃくりあげた。白い朝日が彼女を照らす。

おはよう雛森。

音もなく呟いてみた。







*ひつも童貞だった

2020/08/22(Sat) 00:52 

◆onliestな日番谷君 



彼女がΩというのは研修の時から知っていた。首にかかった透明な無機物はパッと見ではそれとは分からないが一度気づいてしまうとアクセサリーともジュエリーとも言えない堅固な防具のように見えた。
どうしたって隠せない性を抱えて生きていかねばならない彼女には皆哀れみを感じていたようだ。同時に興味も、嫌悪も。
雛森がΩ性であることは同期の間に直ぐ広まった。取分け男どもの間では不埒な会話の餌となって。

「あんな清純そうな顔してるのに」
「Ωなんて良物件のαを漁りに来てるんだろ」

そんな噂が囁かれる。勿論俺だってΩに良い印象は抱いてなくて。今まで見てきたΩは皆、優秀なαを捕まえる為に目の色を変えていた。だから俺もそう思っていた。どうせハイスペαを見繕っているのだと。絶対に近づくもんかと。けれど、

「落としましたよ」

入社式の日、落としたハンカチを拾ってくれた雛森は意思の強い目をしていた。それはとてもα漁りをする者とは思えなくて。同じフロアで働き始めるとその印象はますます強く、彼女の評価は変えざるを得なかった。
明るくて素直な性格は自ずと上司や仲間達から好まれる。それに自分がΩであることを恥じているのか色恋沙汰の会話では口を噤み、困ったように笑うだけ。俺の知っているΩとは大違いなあいつになんだか調子が狂った。

「日番谷君、どうして!」

だから知りたいと思った。
どうして目で追ってしまうのか、何故付いてきてしまったのか。Ωとなんか一生関わりたくないと思っていたのに自ら本能に身を委ねるなんて気が触れたとしか思えない。

希少なΩ。
運命の番。
本能の為せる技に運命もクソもないと思っていたのに、

俺は彼女の手を取ってしまった。


*今回のスーツひつ視点
コメありがとうございます〜嬉しい!
返信は後ほどさせていただきます💦💦

2020/08/15(Sat) 00:47 

◆onliestの日番谷君 



まぁたあの二人くっちゃべってやがる。

上司との打ち合わせを終えた俺はフロアの窓際に位置する部署に目をやった。あそこは小ぢんまりとした少人数だが御客のニーズを吸い上げ、開発・戦略方針を提示したりする重要処を担っている。販路の方向性を確かなものにする為の数字を引っ張ってくるのも彼処の部署の役割だ。上役が集う社内会議ではあのチームに依る資料を参考に話が進められることが多い。
そんな部署なのにまったりとした弛い空気がいつも漂っているのは所属しているメンバーがそうさせているのだろうか。以前雛森にLINEでそう話したら「たぶん御客様と直接接しないからだよ」と返ってきたが絶対それだけじゃない。
男女半々くらいの十人足らずのメンバーは、大人しそうな定年間近の男から新人の若い女まで老若男女が揃っている。たまに意見のぶつかり合いがあるようだが俺が見かける時はほぼ和やかなサザ工さん一家だ。一番チビっ子の夕ラオな雛森は波平平子によくなついている。
まぁ爺孫だしな。つうかいつまで喋ってんだよ仕事しろよお前ら。
俺に対してはいつもどこか遠慮気味な雛森だがあの上司には屈託無い笑顔を見せる。口を開けば冗談ばっかの平子のせいだ。くそぉ、波平なら波平らしく厳しくしろよ。女子社員相手に好かれてんじゃねぇ。
俺は手元のファイルを取った。割りこむ口実ならあるんだ。

「失礼します。平子主任、」
「おう、日番谷か」

二人の間に割って入れば雛森夕ラちゃんは俺を上目でちらりと見るとしずしずと下がっていった。俺は少しばかり憂さが晴れるも何やってんだと自己嫌悪。声が聞きたかったのは平子の方じゃないだろが。1秒にも満たない視線の交差で満足できる訳がない。

もう10日も接触してないんだぞ。

どうにも不完全燃焼で俺はスマホを手に取った。


『この間のファイル━━━━』


直接口で、何故言えない?



*面倒臭いタイプの日番谷君
どうしてもひつ視点書きたいの

2020/08/11(Tue) 12:31 

◆虚しさに泣く(オメガバ日雛) 





何時に終わる?
表で待ってる
今度はいつ?

浮かぶ気持ちをスマホの画面にいくつも並べてすべて消した。
会社を一歩出た大通り、見上げた先の三階フロアはまだ煌々と明かりがついていて、あの明かりの元、雛森はまだ頑張っている。
俺はポケットに手をつっこんでアテもなく街をさ迷うことにした。
鈍すぎる同期のフルーツ娘は俺が手伝うと言っても自分の仕事だからと断りやがった。
あいつは俺が何故手伝うと言ったか理解してるんだろうか。ただの同期の親切心と取られてるんなら虚しいことこの上ない。

【大丈夫だから……ありがとうね】

下がりきった眉に胸が抉られた。
困ったような笑顔で言われちゃ引き下がるしかなかった。PC仕事なんて横から手伝える作業じゃない。せいぜい珈琲を入れてやるくらいで返って気を散らせるだけの迷惑行為だ。それを十分分かってて俺は手伝うと名乗りを上げた。「ありがとう、嬉しい」そんな言葉が返ってくるかもしれぬ、万分の1の可能性に賭けて。
結果は気遣いに満ちた断りの文句だったけど。


もっと近くにいたいずっと側にいたい誰にも渡したくない。醜い独占欲は日に日に膨らんで俺の心を支配する。もうヒート期間を乗り切るだけの相手じゃいられない。彼女の肩に誰かが触れた、その事実が許せない。彼女の甘く優しい匂いを嗅ぐと胸が切なくなるのはどうしてだ?この感覚を持つのが俺だけでありたい。
なのにいつも帰ってくる返事は「待たなくていいよ」「後で話すね」「なんでもないから」と素っ気ないものばかり。もっと頼れよと叫びたいのに雛森は何も話さない。
俺は欲求解消の道具か?
そうは思いたくないけれどシーズンを終えた無発情期の俺達は狼狽してしまうほど健全だ。物足りなくて狂いそうだ。


狂いそうだよ雛森。






*果てしなく雛視点を書いてるとひつ視点書きてぇー!ってなります

2020/07/17(Fri) 21:39 

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