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*苛めっこ×苛められっ子



*学パロ日雛




先生方の研究授業だとかで今日の授業は午前中で終わりだ。雨が降る前に帰れそう。やったね、これも日頃の行いだね!


てなわけで、あたしと友人達は終礼が終わるとサッサと教室を後にした。空は今にも降り出しそうな雨雲で、降り出したら明日の朝まで止まないらしい。ついでに付け加えるなら現在大雨暴風注意報発令中だ。まだポツンともきてないけれど一時間後にはわからない。そんな危うい空模様。


「今なら走らなくてもバスに間に合うよ」
「ラッキー、それ逃したらら30分待ちだもんね」


廊下にあたし達の声が響く。こんな天気予報じゃ寄り道もできないけれど早く帰れる日は天候に関係なくテンション高めだ。


「でもあたし一応傘持ってるから万が一降り出しても怖くない〜」
「なにそれ自慢?でもあたしも置き傘してるから平気だもんね。桃は?」
「傘…忘れた」
「あちゃー、まぁもし降ってきたらあたしが入れてあげるよラーメン一杯で」
「高い!」
「うそうそ、冗談だって」
「ぷぅ!」



友達の笑えない冗談に頬を膨らませたけどそれも一瞬。今日は半休ですからね、桃ちゃんは機嫌がいいわけですよ。だから許しちゃう。


「アイスなら奢ってあげるよ」
「やった!桃、太っ腹!」
「雨が降ればね」
「あ…ねぇ…桃、あれ…」
「ん?」


ふざけるあたしの脇を友達の一人がちょいとつつく。
その目線は前方を指していて。


「え…」


昇降口にある下駄箱に見慣れた人影が…しかもちょうどあたしの靴箱付近…。
ま、魔王さまーーーーーーーー!


「ワタクシちょっと所用が…、」
「諦めな、桃」


クルリと踵を返したあたしの腕を隣りの友人はガシ!と掴み、敢えなくあたしは魔王さまへと献上される。銀髪を揺らして魔王さまはとん、と壁から背を離し「なにサッサと帰ろうとしてんだよ」と宣わった。



「ふぇぇぇ!」


なんで一番に教室を出たあたし達よりも早く下駄箱に来てるんですか!?ワープですか!?それともタイムワープですか!?それに今日はもう授業は終わったんですけどまだ何かあるんですか!?先生は確か今日は部活も委員会も無いと言ってましてけど!?用のない生徒は早く帰りなさいって言ってましたよ!?
なのになぜあたしを引き止める!?雨が降りそうだから一刻も早く帰りたいいいい!



いつもの腕組みと見下ろす仕草。見慣れたパターンに雑用の予感がする。


「だって、今日は研究授業で早く下校しなさいって先生が言ってたもん…」
「その研究授業の手伝いを俺がすることになった。だからお前も手伝え」
「えええええ!?」
「桃おつかれー」


地を掘り起こす勢いで声をあげた。そんなあたしの肩をポンと叩いて友達は追い越していく。いやちょっと待って。


「どうして日番谷君が手伝うの!?それに手伝いに二人もいらないんじゃない!?」
「わけは化学の石田に訊け。おら早く戻れ、俺一人じゃ運びきれねぇんだよ」
「もしかして重労働!?」
「桃、雨に気をつけてね」
「やだ!待って!」
「因みに日番谷君傘は?この子傘忘れたんだって」


ちょっと友人、日番谷君に変なこと訊かないで。


「最低だな。安心しろ、もし降ってきたら入れてやるから」


傘忘れたら最低呼ばわり!?


「これでもし降ってきても安心だね桃。せいぜい日番谷君の助手頑張ってきな」


他人事だと思ってぇ!


ひらひら手を振る友達を涙目で睨んだけれど彼女達は全く気にしてない顔で靴を履き替え昇降口を出て行った。が、うち一人が何やら思い出したように引き返してあたしにそっと耳打ちする。


「良かったね、王子様と二人きりだよ」


「……」


王子様?ああ、暗黒王子ね、それなら解る。
まるで秘密裏に行われる楽しいイベント事のように言うけれど、夢溢れる空間にはならないよ。
ゆっくり見送る間も無く日番谷君は早くしろと言わんばかりにあたしの頭を掴んで方向転換。うう、あたしも早く帰ってうちでゴロゴロしたいよぉ。


「あ、降ってきやがった」
「ふぇ〜ん、あたし傘ないのにぃ」
「だ、だから安心しろって言っただろ。お…俺の傘に入れてやる。」



そっぽ向いて。さっきとは大分違う口調で。表情はよく見えないけれど見えてる耳が真っ赤っかだ。あのそのどうしてどうして赤くなっているんですか?日番谷君に赤くなられると調子が狂う。さっきと似たような台詞なのに二人きりになった途端言い方変えるのやめてほしい。二人の間に漂う空気がギクシャクしちゃう。


「お、御世話になります…」


だからあたしももごもご口籠もってしまった。
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