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□七周年記念話「目撃情報」
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Aルキア




恋次は本当にそそっかしくて困る。
十三番隊で散々食べて騒いで寛いだ挙げ句、肝心の書類を忘れおって。まったく、いくつになってもどこかヌケている。












「あ……」



恋次を追いかけて六番隊を目指している途中、隊舎から少し離れた木陰で日番谷隊長と雛森副隊長が眠っておられた。
日番谷隊長は雛森副隊長の膝枕で。雛森副隊長は彼に膝を貸しているうちに眠ってしまわれたのか、座ったままの姿勢でゆらゆらと舟を漕いでいる。死覇裝を着ていなければ微笑ましい姉弟の昼寝に見えるだろう。寛いでいるうちに眠ってしまうなんて双方よほど相手に気を許している証拠だ。
この広い尸魂界、人は皆孤独だ。短命な者も多い。そんな世界で出会った仲間は誰しも特別なんだろう。私も恋次と出会わなければもっと荒んでいたかもしれない。それほど流魂街という場所は悲惨なのだ。



日番谷隊長と雛森副隊長が共に生活していたというのは有名な話。二人とも人間的にも素晴らしく、とても荒れた流魂街出身とは思えない。それはなぜか?と考えたら、二人が共ににいたからだ、と直ぐに答えが見つかった。


しっかり者の日番谷隊長と優しい雛森副隊長。互いに補い合い支えあった者だけが共有できるものがあるのだ。一人きりでは相手を思う余裕も持てない。


少し強めの風が吹いた。
起きている私には大したことのない風だが敏感な日番谷隊長には十分目覚ましの代わりになったのだろう。軽い身じろぎの後、覆い被さるようにしてゆらゆら眠る雛森副隊長に驚いた顔をしていた。



私も随分、悪趣味だな。

真っ赤になる日番谷隊長を盗み見してにやけるだなんて。



 
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