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僕等のかたち










*学パロ同期組








いつか日本を代表するような物を作ってやるぜと阿散井君は建築設計士への夢を語った。朽木さんは小さい頃、お兄さんが描いてくれた絵がトラウマ……いや、印象深く、イラストレーターへの道を選んだ。優しくて世話好きの雛森君はギリギリまで保育士か看護師かで迷っていたけれど、どうやら看護の道に進むことに決めたらしい。医学部を目指す僕としては彼女が同じ医療の道を歩いてくれるというのはとても嬉しいことだった。







今日は阿散井君の推薦入学が決まったのと、朽木さんの専門学校合格が決まったことのお祝いに4人で焼き肉屋へ繰り出した。もちろん大食いの彼のため、90分食べ放題だ。


上機嫌の阿散井君がジュースのおかわりをたのんで朽木さんに飲みすぎだ腹を壊すぞと怒られている。それを雛森君がまあまあ今日は大目に見てあげようよと宥め、僕は、優しくしたら彼はつけあがるからと容赦しない。でも結局、誰が何を言っても阿散井君は自分のやりたいことを通してしまうのだけれど。
あぁ一つだけ僕等の共通点があった。
僕達4人ともやりたいことは通してしまうのだ。



見た目、粗野でがさつで悪っぽい阿散井君に、黙っていれば楚々としたお嬢様な朽木さん、にこにこふわふわ丸い空気の女の子の雛森君と、よくオタク男に間違えられる僕は異色の取り合わせなのだろう。学校でも外でも4人が固まればちょっとした好奇の目で見られてしまう。

確かに趣味も嗜好も全く違うし性格だって全然違う。唯一の共通点が頑固者だというのはいいのか悪いのか判らない。けれどいっしょにいるととても楽しいし勇気がもらえるんだ。「仲間」なんていう言葉を噛みしめているのは僕だけじゃないと思っているのだけど、皆はどうだろう?わざわざ聞くのも照れくさい。
きっとこんなこと口にしたら阿散井君に頭を殴られるだろうな。そして朽木さんが彼を注意して雛森君が笑い転げて。



たぶんずっとずっとそんな感じなんだろう。数年後に会ってもたぶんそんな感じなんだろう。大人になっても年をとっても、会えばたちまちこの空間が作れてしまう、そういう関係。

みんなお願いだから変わらないでくれよと僕は心の中でそっと願った。




だってそれが僕等なんだから






 
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