ss
□2
3ページ/101ページ
borderline
*原作日雛
少し肌寒くなってきたと桃が擦りより俺の掌に小さな手を忍ばせてきた。
二人で歩く初秋の夜道は確かに薄い着物じゃ少し冷える。並んで歩く桃の腕が俺の腕にぴったり寄り添って、ほんわかした温もりが腕から胸へ、じん、と沁みてくる。
目があうと桃は恥ずかしそう俯いた、でも嬉しそうに、ふふふと笑って俺の腕にギュッとくっつく。
蔦が絡まるように腕から指先までを絡めて歩く。とりとめのない話をしながら互いに手遊びみたいに絡めた指を動かした。絡めて、結んで、外して、その指の動きはいつまでも落ち着かない。
桃の細い指を強く捕まえる、また弱く緩めて逃がす。掌の中の小鳥を潰さぬよう弄びながら俺は楽しむ桃の反応を窺った。
もう少しで五番隊の隊舎へ着く。ご機嫌な桃はきっと笑顔で「また明日」と「おやすみ」を俺へくれるだろう。繋いだ手をそこで離して別れの手を振るのだろう。
でも桃、俺はずいぶん我慢しているんだ。
付き合ってどれくらい経つ?恋人にはなれたけど、俺は未だに弟の延長線にいるような気がしてしかたない。二人きりで部屋にいても、まるで幼なじみの頃と変わらない。
今より深く、お前に触れてもいいか?
こんな指先だけじゃ、俺はもう物足りなくなっている。愛しい気持ちが溢れて行動の端々に滲み出てしまう。笑顔で別れた後、俺が振り返ってお前の背中を見ているのを知ってるか?
歯止めがきかなくなるのは困るけど、もっとお前に煽られたいと思っている。もっと近くで俺に火を付けてほしいと思っている
「日番谷君、じゃあ…また明日…ね。送ってくれてありがとう、おやすみなさい……………あの…日番谷君…………?」
俺は桃の小さな手を強く握って掌の中にしまいこんだ。それを引いて彼女の小さな身体も腕の中にしまいこんだ。
小さな声があがったが、それくらい予想済みだ。次に言う台詞も決めてある。
まだ帰さない。
幼なじみと恋人の境目を越えた俺達は、戯れと行為の境目も越えていく。