短編1

□十番隊オムニバス・花
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*君に、花を(sssより)乱→ギン





夢に見る幼馴染みはいつも後ろ姿からだった。



所々汚れた粗末な着物をきて、あたしが声をたてる直前に振り向いて笑ってくれた。

驚かそうと思ったのに…。

頬を膨らませたらゴメンと素直な言葉が返ってくる。
いつもギンとは喧嘩にならない。臍を曲げるあたしにすぐ笑顔で謝るから。

はい、これ。
なによ、これ。

そっぽ向いたあたしの前に一本のしろつめ草が差し出された。

乱菊にあげる。これで機嫌直して。
あたしはこんなに御手軽じゃないわよ。
わかってるて、いつか仰山の花を乱菊にあげる。埋もれるくらいの。


そんなあいつの調子のよさに馬鹿、と一言切って捨てたけど、また先を歩きだしたあいつに隠れてこれがいいの、と一本の白い花に口づけた。















「おはようございます乱菊さん。」


気怠い昼休み。ぼんやりと瞼を開ければ柔らかな後輩の笑顔が見えた。

あたし…寝ちゃってたのね。
上半身を起こして呟けば、後輩はクスクス笑ってほんの数分ですよと教えてくれた。


「何の夢をみてたんですか?幸せそうでしたよ。」


何の…………。あいつの。









あの頃、小さな幸せを見つけたのは、あたしだけじゃないはず……そう思うのに。









 
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