短編1

□スイッチ
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俺は小さい頃、常に学年平均よりも発育の遅い子供だった。けれど近所に住む桃はそんなチビな俺と反比例して大きくて。
身長順で並んだ俺と桃は一番前と一番後ろ、同い年なのを疑いたくなるほどの身長差があった。

だからか。

同い年にもかかわらず桃は何かにつけ俺をかばったりかまったり世話をやいてくれていた。子供心にも同学年の桃に保護者面をされて俺のプライドはいたく傷付いたものだった。高い所にある物をとってくれたり後ろから押された俺を支えてくれたり、男として女に助けられるなんて恥かしい場面ばかりの思い出だ。

俺よりも背が高くて力も強かった桃は俺の母親からも頼りにされてて、それがまた桃の庇護精神に拍車をかけたと俺は思っている。
俺と桃が連立って出かける時、いつも「桃ちゃん、冬獅郎をお願いね。」なんて言ってた親を恨みたくなる。いったい俺を何歳だと思ってんだ。桃と同級生だぜ?親戚のお兄さんやお姉さんに頼んでる感覚だろ、それ。また不機嫌な俺の横で桃が「はぁい。」なんていい返事をするもんだからまたそれにもイライラは募っていく。
そんな少年時代。


けどでもそんな俺達も高校生ともなれば男は男らしく、女は女らしくなるわけで…。



















「日番谷ー、客だぞー。」


窓から入り込む風が気持ちいい昼休み、俺が窓際の席で黒崎と話していたらクラスの男が戸口で俺を呼んだ。
客?
無表情でそちらを見れば、教室の入口で頬を染めた少女、とその友達らしき女が2、3人。


「あー…、ご苦労さん、いってらっしゃい。」


向かいに座った黒崎が曖昧な笑顔で俺に手を振った。その救いようがなさゲな表情はなんだ、ムカつくんだよ。俺は仕方なく立ち上がり、オレンジ頭を軽く一発ペシンとやると入口へと歩いた。


なんてことはない、女からの告白だ。休み時間はゆっくり休みたいのにこうもしょっちゅう呼び出されたんじゃ休みも何もあったもんじゃない。
それでも邪険に断ると付き添いの女共が五月蠅そうだから、ため息つきつつ後をついていく。

っとに、この俺の不機嫌な顔を見れば答えはだいたいわかるだろうに。世の中の女は自分達をか弱いだとかデリケートだとか評するけれど、俺に言わせりゃふてぶてしくて図太い生き物だ。



ほんとにどこまで行く気だよ。貴重な昼休みは短いんだ。また三階まで上がって来なけりゃならない俺の労力をテメェらは考えてんのか?
なんかめんどくさくなってきた。消えてやろうか?


肩に手をやり首をこきこきいわせ、雲隠れすることを決めた時、一階の渡り廊下を歩いている桃を見つけた。










 
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