短編1

□卒業
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「雛森!」

突然、名前を呼ばれてあたしは飛びあがった。
藍染先生とあたしだけの社会科資料室は本当に静かで。階下の喧騒が嘘みたいにこの部屋は静まり返っている。
だから、突然の怒鳴り声に余計、ビックリしたのだ。

涙を拭き慌てて視界をそとへ巡らす。

「雛森!」

もう一度呼ばれた。声の主は日番谷君。

いつもの綺麗な翡翠の瞳でこっちを見てる。いや睨んでる…?

「なにー?」

あたしは慌てて涙を拭き返事をした。

「これからクラス会だぞ。阿散井達はもう、行っちまったぜ。お前も早く用意しろ!」

そうだ。式が終われば駅前のカフェを借り切ってクラス会があるんだった。
あたしは急いで立ち上がり藍染先生に挨拶をした。

「藍染先生。ありがとうございました。…絶対にまたきますね。」
「楽しみにしているよ。」

あたしと先生は握手をした。また涙が零れる。なんであたしはこうも涙腺が緩いんだろう。先生がそっと涙を拭いてくれた。
優しい、本当に優しい藍染先生。

「さようなら、先生。」

「雛森ぃーー!!早くしろ!」

あたしの呟きは見事に日番谷君の怒鳴り声に書き消された。

なんであたしは日番谷君なんかを好きなんだろう。

立て続けに何度も怒鳴られ、さすがのあたしもしかめっ面になる。
先生はクスクス笑ってボソリと言った。

「どうやら彼はずっと僕達に気付いてたみたいだね。」

「は…?」

「いや、なんでもないよ。早く行かないと日番谷君が待ちかねているよ。」

「はい。それじゃあ…」



あたしは笑って部屋を出た。
最後に見た藍染先生も笑っていた。
いつもの笑顔。
それが見れてよかった。















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