短編1

□位置関係
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夕方になり一段落ついたところで俺はパソコンから目を離し、メガネをとり、ふう、と息を吐いた。

午前中は担当者の伊勢七緒と阿散井恋次との打ち合わせ。実は阿散井は俺の高校時代からの親友だ。まだ新人である阿散井は外回りするときは伊勢に付いているという。今回の俺の仕事は彼が編集長に俺のことを推してくれたらしい。改まって言うと照れくさいが、とても感謝している。



三人での話が午前中で終わったので、午後からはずっとパソコンに向かって仕事をしていたのだ。

ふと時計を見ると四時過ぎ。いつもならそろそろ桃が帰ってくる時間だが、今日は遅くなるって朝言ってたな。ということは夕飯の買い出しに行かなくては。


キィ、と椅子の音をたてて立ち上がった。


外に出てはじめて今日がいい天気だということに気が付いた。
そういや今日はじめて家の外に出たな。仕事柄部屋にこもりっきりになりがちで下手すると二、三日外にでないなんてこともよくある。締切った部屋にいると、桃が我慢出来ないと言わんばかりに家中の窓を開放つ。プリプリと頬を膨らませながら戸を開け窓を開け、歩き周る桃を思い出して自然に口許がゆるむ。そうだ。


今日はひさしぶりに親父の手料理を食べさせてやろう。慌てて帰って来て夕飯の用意がしてあったら、きっとあいつはビックリするんだ。

桃の驚き喜んだ顔を想像して、またもや一人にやついた。


そして、いつもいく雑多に商品が置いてある近所のスーパーではなくて、ちょっと遠いけど品数抱負なデパートへと足を向けた。













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