短編1

□一歩ふみだす。
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今日の夕方 あたしは現世での虚退治から戻ってきた。
調査書よりもかなり大勢の虚に隊は一時乱れ、その隙を突かれた。


あたしが油断していたのだ。
こちらは人数も多く、敵はたいしたことはないときいていたから。



新人隊員を連れていくという時点でもっと気を引き締めていれば…


思ったよりも素早い攻撃を仕掛けられ、新人隊員は逃げ遅れてしまったのだ。助けに戻ろうと振り向いた時、彼は弾き飛ばされ、空を舞っていた。なんとか地面に叩きつけられる間際にうけとめたものの彼の死覇裝の胸元は血がベッタリとついてて…。


漸く虚を全て倒しこちらに戻って直ぐに四番隊へと怪我人をはこんだ。


死者はなく、怪我人もかすり傷程度の者が殆どだったのは不幸中の幸いだった。
新人隊員の彼だけが肋骨を折る重症をおった。







手当てが終わりベッドに横たわる彼に何度も謝った。

頭を下げるあたしに彼は
「とんでもないです!俺、全然気にしてないっすよ。無事に生きて戻ってこれたのも雛森副隊長が受け止めてくれたからで。
こんな傷どうってことないです!」

二カッと白い歯を見せて笑ってくれたのが、とても嬉しく同時に自分が情なくなった。

ほんとはしゃべるのも痛いだろうに。

あたしがここにいつまでもいたら休めないよね。そう思い

「本当にごめんなさい…。また、くるね。」
そう言って椅子から立ち上がり病室をあとにした。



それから報告書を仕上げ、一人になりたくてここにきたのだ。



この丘はいい。
嫌なこと全部忘れられる訳じゃないけど、自分を見つめ直せる。


泣くのは簡単だけど、それで解決できるわけじゃない。

「…成長しないとね。」


自分の頬をおもいきりパンパン!と叩く。
「わーーーーー!!!!!」
ついでに叫んでみた。少し喉が痛い。

「うん!頑張る!」
一人ガッツポーズ。





「声でかすぎ。」


「日番谷君!い、いったいいつからいたの」
「お前がぼーっとつったってるとこからだ」
「早く声かけてよ!」
「自分で気付けよ」

「じゃあ霊圧消けさないでよ!」

「甘えんな。」

むぅーー、面白くない
あたしはプィッとそっぽ向いた。

日番谷君はグングン大きくなって、いまではあたしより頭一個分背が高い。
小さくて可愛い弟分のシロちゃんがいまだにあたしの中で色濃く残ってて、すっかり大人になった日番谷君をみると何だか寂しくなる




「何しにきたの?」

ふてくされたままきいた


「お前が四番隊へいったってきいて、そんで五番隊へ戻った頃にまたいったらどっか行ったって言われて、んでここにきた。」
「何か用だったの?」


尋ねると日番谷君は急に変な顔をした。
な、なんかマズいこと言ったかな?言ってないよね?そんな深い意味もない言葉しか言ってないはず。


「その調子なら大丈夫だな。」
「…もしかして心配してくれてたの?」
「どっかの誰かさんは泣き出すととまらねぇからな。五番隊の仕事が溜まっちまう。」
「そんなに長く泣かないよ!日番谷君、なんか今日はいつも以上に絡んでくるよね。」
「普段と同じだ」



確かにニコリともせず会話をする彼は普段通りだ。でも、(たぶん)あたしのことを心配してここに来てくれた今日の日番谷君は、いつもより少し意地悪で優しい。


だってあたしの心がさっきより浮上してるもの。これって日番谷君のおかげだよね。








「ありがとね。日番谷君」


クスリと笑って御礼をいった。


すると彼はちょっと目を見開いてそして
あたしを背中から抱き締めた。
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