短編1

□10
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*平+雛+吉良







「あ〜…ひまやなぁ……。」


「暇じゃないです仕事してください。」


今日は朝からええ天気や。
俺は昨日まで現世で一週間の調査で、その出張明けとなると多少気も抜けるんは仕方ない。一週間ずっとハードスケジュールやったんや、今日くらいはゆっくり仕事したかてええやろ。
そう思てほんの少しだらだらしたら真面目な俺の副官は、可愛い顔にびし!と青筋を作って目を据えた。心なしか筆を持つ手がぷるぷるしとるような…。


「ちょっと言うてみただけやんけ。」


「隊長のちょっとはほぼ本気の発言なんで聞き流せないんです。」


「お前も今日1日くらい羽を伸ばしたらどうや?」


「夕べぐっすり寝たので大丈夫です。それより調査書の提出を速やかにと一番隊から言われてるんで隊長も手を動かしてください。私一人じゃなかなか…。」


教育ママみたいな口調で言う桃に、俺はふざけて手をひらひら振ってやった。


「なにを……しているんですか?」


「手ぇ動かせ言うから動かしとるんや。」


しれっと言うたったら桃は無言でカタン、と席を立った。そして徐に文鎮を掴むと大きく振りかぶって…。



「ままま待てぇ!冗談や冗談!イッツ・ジャパニーズ・ジョーク!ノー・モア・ウォー!」


「隊長ガ何ヲ言ッテイルノカワカリマセーン。」


「嘘つけぇ!何となく解っとるやろ!」


「Be quiet、captain.」


「流暢やん!」


「失礼します。三番隊副隊長の吉良です。」



殺気立った桃から俺を救ってくれたのは三番隊の細いやつ。まさに天の助けっちゅうやつや。


「桃!ほら!お客さんや!早よ出て!」


「吉良くん?」



桃は振り上げていた文鎮を降ろすと戸口に向かう。とりあえず俺は桃の怒りの鉄槌を逃れてホッとした。


「失礼します。」


「いらっしゃい吉良くん。今日はどうしたの?」


「うちの隊長から平子隊長にちょっと頼まれてね。」


「なんや?」


尋ねると三番隊の副官は一枚の紙を俺に見せた。


「演奏会?もしかしてローズの?」


「内々の催しなんで気軽に来てくれとのことです。」


「俺忙しいねん。絶対嫌や。」


見せられた紙には花の絵ばかり描かれててやたらにぎにぎしい。こんな学芸会のお誘いみたいなんで誰が行くっちゅうねん。


「面白そうじゃないですか。毎日暇そうにされてるし行かれたらどうですか?」


ひょいと俺の手元を覗いた桃が毒混じりに促してくる。暇そうで悪かったな。ローズんとこの副官は気弱な笑みを浮かべて是非ともと重ねてきた。せやから嫌やっちゅうたやろ。


「どうしてそんな頑ななんですか?素敵な音楽が聴けるんだからいいと思いますけど。」


「そんならお前行ってこいや。」


「え?」


「雛森君来てくれるの!?」


青白かった顔色に光が差したかのように見えた。


そういうたらこいつ…。いつやったか乱菊が言うてたな。三番隊にガキんちょ隊長のライバルがおるって……さてはこいつか。


俺がちょいと投げた言葉にイヅルは思いの外食いついた。急に表情がいきいきして心なしか血色もいいような?


「嬉しいなぁ、雛森君なら大歓迎するよ!」


おい俺は?


「で、でもこれ隊長さん限定だし…。」


「書いてるだけだよ。そんな限定してないから。」


「うーん、平子隊長が行かないのにあたしが行くのも…。」


「そんなこと誰も気にしないって。」


躊躇う桃にイヅルは今がチャンスとばかりに押しまくる。
そして桃は押しに弱い。


「ね、おいでよ。そうだ!茶菓子も出るんだよ、雛森君の好きな満月堂の。」


「うーん、でも…。」


ちらりと大きな目が俺を窺う。別にイヅルに協力するわけやないけど俺は行ってきたらええ、と欠伸と供に答えてやった。それに歓声をあげたのは桃ではなくてイヅルの方。ちらりと頭の片隅に、俺を睨む十番隊主従が見えたけどそんなこと一々構ってられへんわ。


「じゃあ、平子隊長の代理ということで。」


「当日は迎えにいくよ!」


そこまでせんでええやろ。


桃から良い返事を貰うとイヅルは喜々として帰っていった。友達が喜んでくれて嬉しいのか桃の表情も明るい。


「当日が楽しみです。」


「良かったやん、俺が行くより価値あるで。」


軽い突風が去って俺達は微笑みあう。桃が置いてくれた茶を口にした時、再び十番隊の二人が頭に浮かんだけど直ぐに消えた。
ガキんちょの恋愛なんかに一々気ぃつこてられるかいな。


「俺だ。入るぞ。」
「十番隊二名、失礼します。」



















ん?幻かな?



 

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