短編1

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「十番隊の日番谷だ、入るぞ……………、」


「あぁ…お前か。」


「…………………………雛森に何している……。」


ガキのくせにムカつくぐらい低い声を出して冬獅郎が俺を睨みつけた。

いったいなんや、その目は!俺が桃になんかやらしいことしようとしたと思てんのがありありや!


「今すぐ雛森から離れろ。」


「アホー!お前何か誤解しとんのやったら全然ちゃうぞ!俺は桃が冷えんように羽織を掛けてやっとるだけや!」


「ふん…ならいいが、こいつに妙な真似したら…、」


「誰に物言うとんねん!俺がそんなことするかぁ!」


ほんまに可愛げのないガキや。けどこのガキが桃を大事に思とる気持ちに嘘はないんはわかっとる。せやから俺もあんまりムキになって怒ったりはせぇへん。護りたい誰かがおるんは幸せなことやろ?



「お前何か用事があって来たんやろ?」


「あぁ、これ、うちに混ざっていたから持ってきた。」


ひらりと出した一枚の紙は来月提出の副官宛てのもの。ついでのついででいいぐらいの、要するにどうでもいい用件で、こいつが桃の様子を見に来たことは明らかや。



「なぁ、お前…今ひまか?」


「俺は暇じゃねえ。」


「俺、今から拳西んとこ行かなあかんねん。桃はこんなんやし、暫くここの留守番たのむわ。」


「っち、仕方ねぇな、サッサと行ってこいよ。」


あー!ほんまに可愛いないわこいつ!ガキが舌打ちするもんほど可愛げの無いもんはない。
けど俺は時間も迫ってることもあって、ここは大人な態度で礼を言うた。


「ほな、頼むわ。」


「あぁ、ほら、これも着ていけ。忘れもんだ。」


そう言ってクソガキが放って投げたのは俺が桃に掛けた白羽織。俺が何かを言う前にやつはサッサと自分の羽織を脱いで眠る桃に掛けていた。


ちょ、俺の羽織、ばい菌扱いか!?
なんやそれなんやそれ、俺の羽織やったら悪いんか!?桃が穢れるとでも思っとんのか!

さすがの大人な俺もムッとした。


けども小っさい十番隊長はそんな俺のことなんか気にもせず、サッサと桃の向かいに腰を下ろして早く出ていけと顎をしゃくる。


この……。


あのガキがこんな性格やったとは知らんかった。隊長やっとるくらいやから中身はけっこう強かやろとは思てたけど、なんやその目つきの悪さは。桃は姉弟みたいな関係やて言うとったけど、それお前が気づいてへんだけやん。


「ちゃんと留守番しとけよ!」


「うるさい、雛森が起きるだろうが。」


「……………おんどれ…、」


「早く行けよ。」


「……………。」



この先、俺は何回このガキと衝突するんやろ。
それを思たら余計にムカついて俺は執務室の戸を思いっきり閉めて出て行った。


この胸くそ悪い気分を拳西あたりにぶつけたる。白もおったらちょっと厄介やな。やっぱローズにしとこか?いや、あいつは話を聞いてくれとるようで聞いてへん。ここはやっぱり乱菊か。

あいつなら十番隊の副官やし、この番犬の対処法を知っとるかもしれんしな。




なんかもう、頭の痛いことが早速一つできてしもたわ………。




 
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