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□520000h感謝小話「ウエディングゴースト」
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ウェディングゴースト






*現パロ


幼馴染みって相手の裏も表も知ってるからか恋人になったといって急にロマンチックになるわけがない。シロちゃんとの付き合いは長いけれど、そういう関係になったのは今年の夏の始めだし、彼に突然恋人面されても戸惑うから幼馴染との恋愛はスロースタートがちょうどいいのかもしれない。


始まりは1つ前の季節だった。今年は皆で花火もお祭りも行けないね、と話してたら2人でどこか行くかと盛り上がり、気がつけばいい感じになっていた。告白したようなしなかったような、されたようなされなかったような。ひと夏が終われば恋人が仕上がっていた、そんなとんでもない手抜き料理番組みたいな展開で付き合いだしたあたし達だけど今のところ悪くない。なんだかんだともう2ヶ月、いつの間にか10月になっていた。

ひたすら居心地いいばかりの二人だから彼氏の部屋に初めてのお泊まりに来ても何だか友達んちと変わりない。晩ご飯は餃子だったしお風呂も別々。お菓子とジュースを買い込んで、今から観るDVDは歴代人気第3位の仮○ライダー○ーズときた。
うん、嫌いじゃないよ仮面のライダーさん。主役は現人気俳優だし面白いし。ただこの空間が部活の合宿所化していくのはいかがなもんかと思うだけ。あたしがハロウィン仕様のチョコを見せても生返事でリモコン操作に必死だし。

「おい、始まるぞ。」
「ラジャー!」(綺麗な敬礼)

テレビ前にクッション置いて彼の隣に腰を据えたけど、いやいや良い返事してる場合じゃないのよあたし。なんのために勝負下着を着たのか思い出しなさいあたし。
2人並んで観る画面には早くも敵と味方が大激突。展開早!
チラリと隣を盗み見ると、なんとこの人!瞬きもなく!食い入るように観てるんですよ!ちょっと奥さん!見ました!?
そんな夢中になるほど面白いかい?

「はぁ…。」

やっぱりあたし相手じゃ興奮しないよね。もう今夜は合宿決定だな、一晩中◯ーズについて語り合おう。ライダー、嫌いじゃないし。語りあう自信はある。

「何溜息ついてんだよ?」
「なんでもなぁい。」
「気になるから言えよ。」
「だからなんでもないって。」
「言えよ。」
「いいって。」
「言え。」
「もー!しつこい!」
「ぶ!」

文字通りしつこいシロちゃんにあたしは後ろにあったクッションを顔にぶつけてやった。ふん、この特撮オタクが。今年の誕生日は1セット3万円の限定変身ベルトプレミアムを贈ってあげるからせいぜい喜べ。
けれどこれが彼をキレさせたらしく、シロは仕返しとばかりにあたしの顔にもクッションを。

「やったな!」
「ぶ!………よくも……やったわね!」
「うわ!このやろ!」
「きゃあ!2個なんて卑怯だ!えい!」
「どっちが卑怯だよ!枕を投げるな!」
「きゃああ!」

やはり部活の合宿だ。DVD鑑賞がたちまち枕投げ大会に変貌した。まぁ、あたし達らしいっちゃああたし達らしい。そのうち枕投げはだんだんエスカレートして、クッションや枕だけに留まらず、タオルや布巾、パーカー等、果ては毛布なんかも宙を舞う。そのうちなんだか楽しくなってきて、あたしもシロちゃんもあはあは笑いながら狭い部屋を暴れまくった。

「食らえ!シロ!」

たまたま掴んだシーツを引っ剥がしてシロちゃんに頭からすっぽりと覆いかぶせる。目隠ししたところに追い討ちをかけてやろうと近づいたら、

「引っかかるか!」
「んぎゃあ!」

素早い逆襲に遭い、あたしは逆に被せられた。視界がすべて白一色で、ヤバい!早く出なくちゃやられる!
けれどもがけばもがくほどシーツの出口は見えなくて。あたしは投網に捕まった魚みたいにバタバタするだけ。

「わああん、み、見えないよぉ、」

シロちゃんのシーツは大きくて、あたしは尚も出口を捜して四苦八苦。このまま「オバケだぞ〜」ってやってやろうかと思ったけれど、流石にそれは痛すぎる。や、でもほんとに出口はどこ?こんな所で迷子になるのあたし?

「で、出られない、」
「ははは、鈍臭いかよ。」
「ふぇ、どうなってんのぉ、」
「はははは。」

このシロめ!人が困ってるのを見て笑うとは!化けてでてやる!
そのうち笑う気配が正面で止まったと思ったら、するりと視界が開けて目の前に彼が立っていた。

「はは、ウェディングベールみてぇ。」
「え?」

シーツを頭から被ったあたしは聞き返す間もなくシーツごと引き寄せられて柔らかいものが唇にあてられた。それは直ぐに離れていったけれど近づいた翡翠は優しく絡む。彼はあたしのおでこにコツンと自分のを当てて掠れた声で囁いた。

「…………もっかい風呂、入ろうぜ。」
「……………ん。」


シーツが床に落ちる。吐息が混ざる。
テレビは切られ静寂が生まれる。
あたしの足は床から離れ、白い狼のものになる。


今宵、ゴーストは変身させられた。












*矢印は昔から日→→→雛だったりして。

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