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□420000h感謝小話「本日はお日柄も良く」
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*現パロ日雛





白いタキシードを着た日番谷君が指折り数える。


「小6の時は隣のクラスの生徒会長だろ。中学の時はテニス部顧問の新任教師。高校は他校のサッカー部キャプテンで大学の時はバイト先のフリーター。」
「それ今言う?」


今日から私の旦那様になる彼は嫉妬深い。そして記憶力バツグンだ。あたしの恋愛遍歴をずらずらと並べて遠回しに嫌みを言う。こういう時付き合いの長さって仇になる。親にも言ってないことも彼は知っているのだからやりにくいったらありゃしない。あたし自身忘れていた過去も鮮明に覚えてるのはやめてほしい。その特技を何かに活かせないかな。あたしの初恋は藍染先生だと思ってたけどとなりのクラスの生徒会長だったのね。そう言えば友達と騒いでた時期があったっけ。
でもそれ今日言わなくてもいいじゃない?



「あと30分で始まりまーす。」
「はーい。」


式場の人が顔を出す。それに頷いてあたしは鏡の前に立った。純白のドレスを着た雛森桃が向かいに映る。いや、もう日番谷桃か。
あたしが幼馴染みの日番谷君と付き合いだしたのは1年前。きっかけはGWに友達から海へ誘われたのが始まりだ。阿散井君がサーフィンを始めたとかで徐々に友達の輪が広がったのだ。あたしはルキアちゃんに誘われて。日番谷君は黒崎君に声をかけられたらしい。集合場所でばったり出会って驚いた。日番谷君と会うのは同窓会以来だったから、この偶然の再会はとても嬉しいものだった。それを機にあたし達は二人でちょくちょく会うようになり気がつけばあたしの左手薬指には指輪が光っていた。人生ってほんと、思わぬ方向へ転ぶからわからないよね。あたしが日番谷君のお嫁さんになるって誰も予想しなかっただろう。
鏡の前に立ったあたしは後ろの椅子に座る新郎さんに最終チェックを頼んだ。


「ねぇ、変じゃない?ベール歪んでないよね?」
「もともと不細工なんだから気にするな。」
「口紅ももう少し薄い方がよかったかなぁ。」
「どのみち料理食ったらおちるだろ。」
「ううう、ちゃんと歩けるか心配だよ。転けたらどうしよう。」
「お前が転けるのを皆期待してるんだから盛大に転けていいと思うぞ?」
「もう!どうしてさっきから急に意地悪なの?!」


あと30分後には誓いの言葉を述べるというのに!籍ももう入っているというのに!緊張する新妻を苛めて何が楽しいの!?

酷い返事に喚いたら日番谷君は長い足を組み替えて沁々言った。



「なんか……ついに結婚かと思ったら俺の今までの苦労が走馬灯のように溢れてきて……。」
「それ明日にしてよ!苦労ってなに!?」
「俺のことそっちのけでお気楽に過ごしてきたお前を思うと悔しいやら憎たらしいやら。」
「可愛さ余って憎さ百倍ってことですか!?」
「あんなにアピールしてたのにお前ってやつは、お前ってやつは……俺のこと気づきもせずに他の野郎にばっかり……。」
「言い方悪くない!?まるで尻軽みたいじゃない!第一そんな熱心にアピられてた記憶がないんですけど!」


開式20分前。あたし達はますますヒートアップ。
喉が乾いたのか日番谷君は側にあったコップの水をがぶ飲みした。タン!と良い音させてコップを置くと白いタキシードの袖口が汚れるのも構わずにぐいっと口を拭った。粘着男が反撃の狼煙をあげる。


「言わなくてもわかってほしかったんだよ俺は!言わせてもらうけどお前以外みんな知ってたんだからな!俺がお前に惚れてること!小学校の時も中学も高校も大学も!働きだしてからもだ!」
「あたしが悪いんですかぁ?!」
「悪い!鈍感は悪!」
「さっさとはっきり言わないそっちが悪!」
「一人だけ気づかない方が異常だ!このにぶちんが!鈍感!無神経!」


はぁはぁゼイゼイ、あたし達はお互いに肩で息をしながら睨み会う。式の前にこんな体力使わせないでよ頼むから。
そうとう溜め込んでいたのか日番谷君の顔をを見ると少し涙目で。あたしは思わず怯んでしまった。ちょっとやめてよ。母性本能を刺激しないで。あたしは「シロちゃん」のこんな顔に頗る弱い。攻撃的な気持ちが萎えて彼を抱きしめたくなってしまうのは幼馴染みマジックなんだろうか。


「……………いいじゃない。最終的には日番谷君を選んだんだから。」


さっきまでの勢いはどうしたあたし。
けど好戦的な気持ちは静まっても唇を尖らせながら言うのは我ながらそうとう可愛くない。
結婚式直前に喧嘩するってなんだろね。思えばあたしの人生で一番よく喧嘩してるのって日番谷君かも。いつもバタバタしてるのがあたし達らしいともいえなくもない。そう思ったら笑えてきた。あたしが口元を弛めると日番谷君も気が抜けるように吹き出した。音もなく彼が立ち上がる。あたしは近づく彼を待ち受ける。

ずっと見てきてくれてありがとう。これからはあたしも貴方から目を離さないね。お爺さんになっても見てるからね。
彼の手がゆっくりと背中に回った。顎を持ち上げられ吐息がかかる。


「あっ!待っ、口紅が、」
「待たねぇ。」


開式間際、長い長いキスが始まった。






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