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□360000h感謝小話「落ち葉は土に還る」
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タッとその場にしゃがみこんで、袂からハンカチを取り出して地面に広げた。手が汚れるのも構わず指で摘んでその上へポイポイ拾っては置いていく。
彼女は気分転換を提案したつもりなのだろう。口が重たい俺にわざと明るい声を出す。
「手が臭くなるぞ」
「だね。でも洗えばいいし」
俺も雛森に倣い座ってはみたものの、とてもそんな気分じゃない。辺りにぎんなん独特の臭いが立ちこめる。
「これを一回腐らせて種をとるんだっけ?」
「…ああ」
婆ちゃんは毎年そうやって収穫していた。それは雛森も覚えているらしい。流魂街では毎年味わう秋の味覚だが、この小さな実は熟すと強烈な臭いを放つ。
「この臭いのさえ克服できれば後は美味しい実を戴くだけだよ。がんば!」
「……なにががんばだ」
腐らせて、美味しい実を、
せっせと拾う雛森の向かいで俺も黄色い実を一つ摘まむ。
腐敗が進む外側を取れば中には固い殻で守られた種がある。更にその種の中には緑も鮮やかな旨い実が。
「日番谷君、大丈夫だから、ね?」
また俺を甘やかす顔をする。
でも雛森が大丈夫と言えば大丈夫な気がしてくるから不思議だ。
俺は柔らかな実をハンカチの上に投げてもっと拾う。
腐って悪臭を漂わせ始めた気持ちも雛森なら拒絶せず受け取ってくれそうな気がしてくる。
そうだな。どのみち腐ってんだ。苦しいなら一掃するしか手はない。
断らないって言ったよな?何でもするって受けたよな?
覚悟を決めろ俺。
どうか、この想いが還元されますように。
「雛森、俺………」
機は熟した
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