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□雛森祭り
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崩れた山を乗り越えた






*原作大人日雛




初めてを迎えた俺達は、はちきれそうな欲望と緊張を抱えて見つめあう。
ずっと溜めこんできた想いと欲と、傷つけたくない庇護心とのせめぎ合い。
そんな俺の中の拮抗を破ったのは彼女だった。





「え、遠慮しなくていいからね…、」


呼吸困難なくらいのキスに彼女の息継ぎが追いつかない。なのに無理矢理俺の胸を押しやって、わざわざそんなことを告げてくれるなんて自殺行為にしか思えない。


「知らねぇからな。」


赤い舌をめがけ、再び終わりの見えないキスをする。
苦しそうな顔をして、それでも彼女は俺を煽ってくる。少し前の俺ならば雛森のこんな表情に怯んでた。できるだけ彼女が苦しまないように、痛くないように、疲れないように。労りながら互いに気持ちよくなることを模索していた。
でも疲れずに快楽を得るなんて無理な話なんだ。気遣って遠慮して、積み重なった我慢の石はどんどんどんどん高くなり、そのうち不安定に揺れ出した。綺麗に積み上げられたのは最初だけ。安定を保つためにあれこれ手法を変えたけど結局無惨に壊れちまった。

手を繋いで指を絡めて、でもそれだけじゃ物足りなく思っていたこと彼女はお見通しだったみたいだ。
日に日に長くなっていく口づけ。
触れられると過剰に反応する身体。
雛森と同じ空気を呼吸したくて、ついつい距離を詰めていた。


ある日とうとう漏れだした俺の欲を彼女に気づかれて。今夜お休みのキスをして別れるはずがそのまま部屋まで上がりこんじまった。一線を越える喜びと同時に生まれたのは、ガラガラと崩れてできた我慢の瓦礫達。雛森の手に引かれるように俺は嬉々として崩れた山を乗り越えた。


「もっと…近づいて、」


甘い吐息が唇にかかる。
合間の誘いに嬉々として乗っかった。小さな唇を食べるように塞いで彼女の舌を追い回す。
遠慮しなくていいんだろ?我慢なんかするもんか。
二人して褥の上に転がった。俺が押したのか雛森が引いたのか、判らないくらい勢いよく。



「離さねぇよ。」



細い首に吸いつきながら囁いた。遠慮しなくていいと言った彼女に覚悟をしてもらう。ほんとにほんとに遠慮しない。もう我慢しない。好きな女に好きなだけ触れてやる。疲労も痛みもまた快楽なんだ。




こんな男に惚れられたこと、後悔しろ。










 



*日雛は初めて同士を希望します
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