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□新しい家族
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新しい家族




*未来・日番谷家












桃の腕に抱かれた赤子に長男は恐る恐る触れた。小さな指の先っちょで、ふわふわの黒髪を掠めるような慎重さで。


「赤ちゃんおめめ開かないね。」


「生まれたては眠ってばかりなんだよ。」






早春の、梅の季節が終わり桃の蕾が膨らみかけた頃、冬獅郎と桃にまた一つ宝物が増えた。

ベッドから起き上がり赤ん坊を抱く桃は昨日出産を終えたばかり。安産だったとはいえかなり体力を消耗した桃は産後の処置が終わるとひたすら眠り続け、夫である冬獅郎と長男が待てど暮らせど目覚めなかった。二人目の出産だからといって夫は慣れるものではない。なかなか起きない妻に冬獅郎が不安になり始めた頃、桃はやっと目を開けた。夫と息子の顔を見た桃の第一声が「おはよう」だったから冬獅郎の脱力感はハンパなかった。なんだそのお気楽な寝起きはと妻の頬を摘みたくなったが、人生においてそうそうない大仕事終えた功労者ということで我慢した。


起きてからの桃はしばらく四番隊の病室で赤子とともに過ごす。仕切り直しというわけではないが日を改めて冬獅郎と長男がやってくると桃はちょうど赤ん坊に授乳中で。

冬獅郎に押された長男は始めて見る新生児に興味津々のていだった。出産初日に見た妹は赤い顔した猿そのものだったが今日は少し人間に見える。兄になった息子はまばたきもせず小さな指で今度は頬をつっついた。まだおっかなびっくりな息子に桃の目尻が下がる。


「ね、シロちゃん名前考えてくれた?」


「ああ、まぁ一応な。」


「一応ってなによ。」


「候補が沢山あって迷うんだよ。」



頬を掻く冬獅郎に桃が笑う。ベッドの傍らに立つ長男はそんな夫婦の語らいなど耳に入っていないらしく、ずっと新しくできた妹の顔を見ていた。


 
冬獅郎譲りの銀髪と翡翠の目を持つ長男は父親の小さい頃に瓜二つだ。そのつぶらな緑が柔らかな命を冬獅郎達とは違う角度から観察する。



 
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