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□20151217day「12月17日ー1月17日のhoneymoon」
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新しい局面を進展という






*原作日雛





















今夜、行ってもいいか?






それはもうさり気ない感じで言われた。

まるで今日晴れるかな?傘いる?みたいなノリで聞かれたから、雛森は危うく「うんいいよー」てな返事を口にしそうになってしまった。けれどそんな通常のノリに騙されてはいけない。二人の関係はもう通常ではないのだから。危ない危ない。


「うっ」と雛森が寸でのところで踏みとどまったのを見て日番谷は、ちっと小さく舌打ちした。

「絶対にだめ!」
「けち。」


赤い顔して断った雛森に日番谷はあからさまに不服そう。可哀想とも思うけれど、でもだからといってその要求は簡単に飲めないのだ。




雛森と日番谷は長い間幼なじみだった。今も幼なじみではあるけれど、その関係性は先日大きく変化した。永らく雛森に片思いしていた日番谷がとうとう想いを告げたのだ。
夜、雛森の部屋で二人まったり過ごしているうちに想いが高まってきたらしい。どこに高まる要素があったのか、後に聞いた雛森は首を捻るのだけれど、まぁ、そもそもまったり過ごしていると思っていたのは雛森だけでお年頃の男女が夜に二人きり、それも片方は恋してる、となれば雛森が気づかなかっただけで部屋にはピンクの空気が充満していた、らしい。日番谷談。

好きな女の子と夜中に二人きり、おまけに密室、風呂上がり。
このままでは襲ってしまいそうな予感に日番谷が帰ると言えば、無意識小悪魔は天使の笑顔で「泊まっていけば?」と言ったのだ。普通の男なら即「いただきます」と手を合わせそうな嬉しい言葉。そして日番谷も普通の男。ただ彼の場合積年の想いがものすごくてものすごくて。すご過ぎて雛森の無防備な発言が気に障ったらしい。



『俺のこと全然男だと思ってないんだな。』
『え?思ってるよ?どうしたの急に?』
『だったら男を泊めるということの意味、知ってるよな?』
『意味?』
『俺はもう、限界だ…』
『何が?御手洗い?』



頭の上に?マークを浮かべる雛森に、日番谷は本当に限界だったのだろう。雛森のズレた返答を聞いても思いつめた様子は変わらず、子供の喧嘩のようにいきなり雛森に飛びかかると唇で雛森の口を塞ぎ、畳に押し倒した。転がされてやっとバタバタと暴れだした雛森に日番谷はやけくそのように「好きなんだ!」と叫んで動きを止めた。
赤い顔で、苦しそうな表情で。
突然訪れた静寂に部屋の空気は一気にピンクからグレーへと重く張り詰めた。


不意打ちで想いを告げられた雛森はただ茫然とするしかなくて。自分を見つめ返してくる雛森の瞳に堪えられなかったのか、一度、目をギュッと瞑った日番谷は気持ちを振り切るように雛森から手を離し脇目もふらず走って帰って行った。もしかしたら泣いていたのかもしれない。

予想もしていなかった幼なじみの告白に雛森はその夜、一睡もできなかった。

だというのに、悲しげな背中を雛森に見せつけて去ったその次の日からだ。日番谷のこの開き直った態度。



「けちですってぇ!?」
「今まで散々泊まってけ泊まってけって誘ってきたくせに。」
「だってそれは…ああああたしにも身の危険を感じる時があってですねぇ…!」
「へぇ、つまり雛森は俺に身の危険を感じているんだ?」
「……う…だって…。」


不敵に笑われて困ってしまった。
原因は日番谷なのに何故追い込まれているんだろう?
明らかな好意を見せつけてきた相手にグイグイ押されて誰が身の危険を感じないだろうか。あの日から日番谷は雛森と二人きりになるとやたら誘うし口説くし嫉妬もする。その豹変の仕方が激しくて雛森は戸惑うばかりだ。

日番谷が心なしかふんぞり返って見える。身長は雛森より低いくせになぜ見下ろされてるように感じるんだろう。悔しい悔しい、本来高圧的に出ていいのは無理やりキスされて告白された雛森の方だと思うのに、あの日から日番谷はやたら上からな態度で押しまくってくれる。



 
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