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□20141217days「12月17日ー1月17日のdepression」
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特に用事なんかなかったけれど、俺と雛森の間柄じゃあ訪ねるのに理由なんか必要ない。この日もちょっと気が向いたからあいつの部屋に寄ってみた。それだけだ。
最近顔見てないからな。
今度婆ちゃんとこに帰った時、雛森がちゃんと元気にしてることくらいは伝えてやらないと。
そう思って俺は雛森の部屋の戸を開けた。
「雛森いるかー?」
「え……、」
からりと部屋の戸を開けた。声をかけるのと開けるのが同時なのもいつも通り。雛森が寝こけてようが食事中だろうが俺はいつもこんな風にかまわず雛森の部屋へ入る。すると奥の部屋からひょっこりと雛森が顔を出して「なぁに日番谷君?」か何か言うんだ。いつもなら。
だがこの日は少し違って。
「………。」
「………。」
畳の上に散らかった着物。
鏡台の前でパンイチな雛森。
「き、きゃあああああ!」
「わ、わ、わああああああ!」
次の瞬間、廊下にまで雛森の悲鳴が突き抜けた。
雛森は寝こけても食事中でもなく着替え中で。俺達はたっぷり1秒間は見つめあった後、二人とも腹の底から叫んでしまった。
悲鳴をあげながら雛森はしゃがみこみ、俺は開けた戸を思いっきり叩きつけるように閉めて脱兎のごとく逃げてしまった。
最悪のタイミング!
ああああどうしよどうしよどうしよどうしよ!
どうしようもこうしようも無いのだけれど、頭が混乱して俺は自分の部屋へ逃げ帰るように全力疾走した。
わざとじゃないんだ。まさか素っ裸だなんて思わなくて、いや裸じゃなかったな一枚は身に着けていた。いやいやそこの訂正はどうでもよくて問題は女の着替えを覗いちまったことでな。
でも俺と雛森の間柄だぞ?他の女の着替えを見たならまだしも昔は風呂もいっしょに入ってた仲だ。そんな慌てることねぇだろうが。雛森は他人だけど他人じゃねぇ。姉貴みたいな幼なじみなんだ。
でも限り無く家族に近い他人。
走りながら俺はあれやこれや考えたが、目の奥に貼りついた雛森の姿が逐一思い出されて思考が纏まらない。ガキの頃とは違う身体つきをした雛森は俺を見た時の反応も女のもので…。
ああー!どうしよう!
とどのつまり、やっぱりこれに行き着くのだった。