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□夫婦のスキンシップと妻の幸福度
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*新婚日雛






あー、気持ちいい。


あたしは湯船の中で寝そべるように脱力した。









1日の疲れを癒やすバスタイムは共働きの主婦にとって至福のひととき。明日からの英気を養うのに重要な時間なのだ。こうしてゆらゆら浮かんでいると指の先まで解されていくのがよくわかる。
あたしだけの大切な時間、今日あった色々なことをリセットできる貴重な時間。
なのにうちの旦那様は…。





「おい桃、鍵をかけるな、俺が入れねーだろが」
「シロちゃんはもう入ったでしょ!あたしは一人で入りたいの、あっちへ行ってて!」
「なんでだよ。せっかく背中を流してやろうと思ったのに。」
「要らないってば!たまには落ち着いて入らせて!」
「俺がいっしょに入ると落ち着かねーのか?んなわけないだろ。」


んなわけあるわ!
毎日毎日、妻の入浴タイムに乱入して過剰なサービスしてくれちゃうおかげで、あたしはちっとも疲れがとれない。
お風呂の扉をガタガタいわす旦那様に「あっちへ行って」とまた叫んだけれど、彼はそんな妻の叫びなどどこ吹く風で鍵を解こうと…ちょっと戸が壊れるってば!


「なんでそんな酷ぇこというんだよ。これは大切な夫婦のコミュニケーションなんだぞ。」
「もっと違う形のコミュニケーションを希望します!」
「俺はこれが得意なんだ。」
「知らんわ!」



鍵をかけてはあるものの、こうガタガタやられちゃ落ち着いて入ってられない。
あたしは湯船に浸かりながら聞き分けのない旦那様に「う〜」と唸った。

いったいどうすればこの野獣……いえ愛しの旦那様を撃退できるのか。え?愛しい旦那なら撃退するなって?そりゃあたしだって彼の全てを受け入れたいですよ。けども、こう元気じゃあこっちの身が保たないっていうか、身に余る幸せというか……………疲れる!偶には休みたい!
まぁ、乱入されてゴニョゴニョしているうちに最後はあたしも彼にしがみついちゃったりしているのだから余計にシロちゃんを調子づかせているのかもしれないけれど、でもでもそれはあたしの本意じゃない。いっしょにお風呂に入るのはいいけれど、あたしは普通にお話するだけで満足なのに彼はそれだけでは物足りないらしい。


「あのねシロちゃん。世間じゃお風呂にゆっくり入っている奥さんほど幸福度が高いんだよ。シロちゃんとイチャイチャするのは嫌いじゃないけどここで疲れてヘトヘトになっちゃったらあたし困るの。」
「心配するな、ちゃんと布団まで連れて行ってやるから」
「それじゃダメなの!明日着る服にアイロンをかけたいしお弁当の下拵えもあるし、仕事の段取りもチェックして…、」
「アイロンがけくらいなら俺がしてやる。」



と同時にどうやって解いたのか、素っ裸の彼が鍵を開けて入ってきた。だからあんた一回入ったでしょうが!そんなに浸かりたきゃプールにでも行ってきて!
百万語の言いたいことはあるけれど、勢いよくバーンと開かれた扉にあたしはもう悲鳴をあげるしかできなくて。


「ぎゃー!」
「喜びの悲鳴か?」






こんな幸福度、贅沢ですか?







 
 

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