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□2013.1217days「あったか記念日」
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*「服用方法はお守りください、と書いてあります」恋人日雛
「なんで別々に寝るんだよ…?」
「おやすみー。」
「こら桃。」
「あっ、ダメダメ!入らないでくたさい!」
「俺のベットだろーが!」
「名前が書いてありませんから誰のでもいいんです。はい、シロちゃんはあっちね。」
こんもり膨らんだベットを睨んで冬獅郎はこめかみをピクピクさせた。このベットは紛れもなく自分のものなのに何故追い出されなければならないのだろう。そう思えば普段から寄っている眉間の皺はますます深くなった。
今日は週末。愛しの恋人が冬獅郎の部屋へ来てくれたのはいいけれど、今夜は朝まで愛を確かめあうつもりだったのに彼女は一人サッサと冬獅郎のベットへ入り、冬獅郎にはポイッと毛布一枚を渡すとおやすみの挨拶もそこそこに背中を向けてしまった。
最初は何か怒っているのかと思ったが、そうではないらしい。
玄関のドアを開けて冬獅郎の部屋にやってきた桃はご機嫌だった。キッチンに立つ彼女を後ろから抱きしめた時も頬を染めて「後でね」なんて甘いおあずけの言葉をくれたのだ。食後もコーヒータイムも二人でテレビを見ながらラブラブしたし、そのまま押し倒そうとしたら桃に唇を押さえられ、お風呂に入ってからと冬獅郎に二度目のおあずけ。
先に桃が入って次に冬獅郎が入って、今やっと出てきたらこの状態。
入浴前と空気がまるっきり違うんですけど、ここ本当に日番谷さんの部屋ですか?あってますね?
俺なんかしたっけ?
そして最初の回想へ。
でも冬獅郎が何度思い返しても今夜はラブっていた二人しかいなかったわけで。
こんもりと小さな山になったベットを見つめながら彼女の態度が急変した原因を考えていたら湯上がりの身体がだんだん冷えてきた。冷たい雫が髪からポタリと背中に落ちて冬獅郎はぶるりと震え、大きなくしゃみを一つした。
「……シロちゃん、早く何か着ないと風邪ひくよ。」
「直ぐ脱ぐから着ても無意味だろ。」
「こら、入っちゃダメ!今日はいっしょには寝ないの!」
「それがわかんねー。理由を教えろ、理由を。」
桃の真意が解らなくて途方に暮れていたら、くしゃみの音を聞いた彼女の方から声をかけてくれた。その声の柔らかさから、やっぱり怒らせたわけではなさそうだ。冬獅郎の身を心配してくれているのに若干安心して、桃が籠もっている布団を遠慮なく捲りあげて侵入した。制止の声を聞きながら強引に身体を入れたら傍らで藍の目がじっと冬獅郎を見据えていた。