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□20130117days「あけましておめでとう」
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2、optimist(新婚日雛パロ)








携帯のアラームが何時も通りの時間に鳴って、冬獅郎は何時も通りにそれを止めた。
気だるい身体をもぞもぞさせて冷えた空気の中に息を吐く。カーテン越しに薄明るい外がわかり、そこでやっと冬獅郎は今日が元旦だと思い出した。

「おい、桃、朝だぞ。」

「ん……。」


隣りで深い寝息をたてる桃はまだまだ寝足りないようだ。まぁ、夕べ遅くまで寝かさなかったのだから仕方ないかと冬獅郎は自分も再びベッドの中へもぐりこんだ。楽しい夜を経た次の朝は、とびきり遅いもんだと相場は決まっている。






彼女と一緒になって初めての正月。あいにくギリギリまで二人とも仕事が入り、双方の実家に帰るのは年が明けてからということにした。つまり今朝は二人きりでゆっくりできるのだ。それをいいことに昨夜は美味しい桃を堪能したわけだが彼女のこの熟睡っぷりからして度がすぎたらしい。隣りで冬獅郎が多少身体を動かしたくらいでは反応無しだ。


テレビでタレントたちが12時のカウントダウンを始めた時にはもうすでに二人は汗をかいていて、クラッカーの音とおめでとうの声が流れる中、深い深いキスをした。

二人で年を越せたことを喜びあい、一緒になれたことに感謝した。何に感謝したかを問われると困るけれど、桃とこうやって年を経ていけるのが幸せだと思えるのだ。二人を巡り合わせてくれた運命の神に、といったところだろうか。


熱い吐息を混ぜ合わせながらあけましておめでとうと交わし合い、今年もよろしくこれからもよろしくと笑みを見せあって再び揺れた。


年越しという少し特別な日だったからか夕べの桃はいつもより貪欲で、冬獅郎は一晩中彼女の中でとろけるような夢をみていた気がする。甘くてとろけそうな初夢だなんて、それはそれで一年が思いやられるが桃といっしょにいる限り毎年桃色の夢は見られるのだ。生涯の幸せは約束されたようなもんじゃないか?


冬獅郎はまだ目覚めない妻の頭を抱きこんで、ゆっくりと撫でた。この可愛い嫁のためにしっかりしないとと起きて早々にベッドの中で新年の誓いをたてる。結婚して幸せ惚けしていると言われないようにしなければ。所帯を持って一回り大きくなったと思われたい。他人の評価なんて今まで気にしなかったが冬獅郎の行いが妻である桃の評価にも繋がっていくと思えば気持ちが引き締まる。
冬獅郎が良くても悪くても嫁のせいなら良いほうがいいに決まっている。

眠る桃を引き寄せて冬獅郎は改めて夫婦になるという意味を噛みしめた。確かに運命共同体だ。

けれど要するに今腕の中ですやすや寝息をたてている、この小さくて大切なものが笑っていればいいんだろう?

桃は冬獅郎が幸福なら笑っててくれる。冬獅郎は桃とずっといっしょにいられて幸福なのだから彼女の笑顔が絶えることはない。

なんて素晴らしい無限ループ。


俺得な結論を導き出して、冬獅郎は桃が目覚めるまで共に夢を見ることにした。次に目覚めて彼女と交わす挨拶は、やはり「おはよう」なのか、それとももう一度「おめでとう」というのか。



これもまぁ、どちらでもいい話だ。彼女の第一声は飲み込んでやる。






 
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