スイーツパラダイス

□檸檬ゼリー
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幼なじみのシロちゃんを追いかけて同じ大学に入った。
また前みたいにしょっちゅう顔をあわすことができると思ったのに二年と一年ではやっぱりほとんど接点がない。だからシロちゃんが所属している真央大学多文化研究会なんて堅苦しい名前の部だかサークルだかにあたしも入ったのだけれど。


「………単に遊びたいだけじゃない。」




ジャズの流れるバーのカウンターに顎を乗せて、あたしは一息ついた。後ろではこの店の雰囲気には些かそぐわない陽気な集団が笑い声をあげている。
その中にあたしのシロちゃんもしっかり交じってて、無表情な顔で淡々とグラスを口に運んでる。中身はもちろんノンアルコールビール。だって12月生まれのシロちゃんはまだ未成年だもの。さっきもそれでからかわれてたけれど。

あたしのために新入生歓迎会を開いてくれたのは嬉しいけれど、シロちゃんと同じく未成年のあたしは後ろにいる酔った集団みたいに騒げない。ていうか恥ずかしい。あの人達の着衣が段々少なくなってきているのは気のせい?赤髪の厳つい先輩はこの肌寒い季節にして既にランニングだ。

あたしも一年後にはああなるんだろうか。悪い人達じゃないんだけど。むしろお人好し、でも謎の多い人物達。尊敬したいような、でも見習いたくないような大学の先輩方。
取りあえず女の子として人間としての羞恥心だけは捨てないでおきたい。
あたしは騒がしいテーブルに座るシロちゃんから視線を移し、カウンター向こうの棚にズラリと並べられたボトルを眺めた。




バーなんて、生まれて初めて入った。高校を出たら一人前の大人になった気分だったけど、あたしはまだ学生で、仕送りされてる身の上で。こんなわけのわからない馬鹿騒ぎに日々を費やしてると親が知ったら泣くだろう。


バイトさがそ……。


大好きなシロちゃんといられるのは嬉しいけれど、それだけに毎日を染めてしまえたらすごく幸せだけれど、さすがにそうはいかなくなった今日この頃。







 
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