短編2

□ため息の数3・sugarless lady
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sugarless lady

1・雛森






昼休み、大学の食堂で友達のルキアちゃんといっしょに昼食を食べてたら、疲れた顔したデビル日番谷がやって来ました。










「雛森、……ほら、これ……。」


低めの声と共にあたしの掌に落とされたのはマンションの鍵だった。


「あれ…?わざわざ持ってきてくれたの……?」


「………いいだろ。ポストなんて不用心だ。」


鍵を受け取りそう言えば、不機嫌に返された。学内での接触はなるべく避けたい人なんだけど、まあこれくらいならいいか、とあたしは有難く鍵を受け取り、



「具合、どう?少しは楽になった?」



「…………。」



「あれ…?日番谷君?もしかして薬効かなかった?」


定食のハンバーグを食べる手を止めて、横に立つ彼を見上げる。


顔色………は悪くないみたいだけど、表情が暗い。不機嫌そうに歪められた口許が苦しい表情に見えなくもないけど……。元々こんな顔だったような気もする。


「………わかんねぇよ。」


「え?おかしいな。薬、効くはずなんだけど…。」


あたしが部屋を出る時は元気に怒鳴っていたのに。どうして今は胡瓜の漬物みたいになってんの?



「…それを言うならしおれた花みたいに、だろ。」



あ、そうか!



「ん?あたし声に出してた?」


向かいの席に座るルキアちゃんに聞いてみた。けれど彼女は大きな目を更に大きくして左右に頭をブンブン振るだけ。



……………もしかして、悪魔能力発動ですか?



タラリと気持ちの悪い汗があたしのこめかみから頬を伝う。


ビシ!



「った!」



「お前変な想像してるだろ!」


「あぅ〜、…痛い〜……。」


「お前の考えてることくらいわかるんだよ!」



派手にでこピンされて額を押さえる。


痛いって!
日番谷君!あんたのでこピン痛すぎだから!


「ううー!何度も何度もしないでよう!跡に残ったらどうしてくれるの!?」



「…………そん時は責任とってやるよ。」



「はあ?」



なに!?聞こえなかったんですけどー!
デカい態度に似合わず小さい声でなんて言ったのよ!

これ以上でこピンしたりほっぺた抓ったりしたらあたしだって反撃してやるんだから!

片手で痛む額を押さえて身構えた。ファイティングポーズってやつよ。


けれども彼は不機嫌丸出しであたしを見つめるだけで何も言わない。


「…………。」


「…………。」



あれ……?
てっきりやり込められると思ったんだけど、……このタメは何ですか?



「あの…?」


「…………なんでもねぇ。」




…………あ、
翡翠の瞳が……揺れた?




「ひつ……。」


「じゃあな。」


一瞬、彼の瞳が揺らめいた気がして、声を出したけど日番谷君には届かなかったみたい。



「…………。」


なんだろう。
辛そうに立ち去った彼は今朝よりも調子が悪そうに見えた。






お祖母ちゃん特製の何にでも効く薬。効果があるのはやっぱり雛森家の人間だけなんでしょうか?











 
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