短編2

□ため息の数2・trouble night
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trouble night
1・雛森










昨日、結局あたしと日番谷君は海には行かなかった。
だって六時からバイトが入ってたし。



それを言うと彼は不機嫌になったけど、こればっかりはしょうがないよ。抹茶白玉を二つもおごってもらったから余計に悪いな、と思ったけど、急にバイトに穴を開けるわけにはいかないもんね。


それにあれ以上あたし達がいっしょにいたらオカシナ関係性が生まれてきそうだったし。

なんて言うのかな、
師弟関係?違うな。
主従関係?似てるけど…。

例えるならば、あたしと日番谷君は、悪魔と無理矢理契約を交わさせられた人間って感じだろうか?

あ、あたしって、うまーい。

あの、どんな女の子も落とすことができるという綺麗な翡翠。あれがキラリと光ればあたしは不思議と彼には逆らえなくなる。

だって怖いんだもん!
眼力有りすぎで変な超音波が出てるんだもん!
あたしそのうち洗脳されてたらどうしよう。


は!
女の子を落とすってこういうこと!?(←違います)



昨日は突然やってきた日番谷君に振り回された。
や、でも、酔ってたとはいえ約束したのはあたしだから彼の方が振り回されたことになるのかな?


とにかく一日が無事に終わって良かった。


日番谷君ともゼミで顔を合わすだけの関係に戻るだろう。

そう思えば、不思議スープも名残惜しい………って嘘だけど。
あのスープには助けられたような苦しめられたような……。










昨日、日番谷君に夕食をごちそうになったあたしはバイトへ行き、そして十一時頃に帰宅した。

早い時間に夕食を食べたせいか小腹がすいたあたしは唯一の食べ物、不思議スープを食したのだ。






その時はまだ普通に食べられた。

ドロリとした少し気持ちの悪い喉越しも、なかなか途切れない長いモズクのキレの悪さも許せた。因みにモズクの酢の物は大好物です。

中華風なのか和風なのか、よくわからない味もまあ、良しとしよう。


一夜明けて、翌朝の朝食もやっぱり不思議スープ、と、おにぎり。

自然、あたしのペースはだだ落ちで………、最後はミルクティーで流し込んだ。

………麦茶にしとけばよかった。あのスープにミルクティーは無かったな。


日番谷君が放った「捨てるな」の一言が何かしらの脅迫観念となって、あたしの中に腰を落ち着けている。


だから昼も同じメニューで、バイトに行く前の腹拵えも、………やはり同じ。

そこで悪魔さん特製の不思議スープは完食した!

偉いよあたし!

なんていうの?
こう……達成感?
それよ!


これでもし万が一、大学でデビル日番谷に出会っても後ろめたいことはない。
あー、気分スッキリ。

ちょっと、なんだか気持ち悪くなってきたけど………。




そう、不思議スープ昼の分をお腹に収めた辺りから、少し調子が悪い。
バイトを終えて、帰宅途中の今、その症状はかなり悪化している。


なんか気持ち………悪い。
というか、身体全体がしんどい。


うう…………、
早く家に………、



あたしはヨロヨロと足を運び、やっとの思いでマンションのエレベーターに乗り込み自分の階を押した。


もう今日は何も食べずに寝ようか。
明日の昼にはバイト代が振り込まれているはずだから、それで何か買ってたべよう。

とりあえず、今は早く横になりたい。





チン、と軽い到着音をさせてエレベーターは止まり、ドアが開く。

あたしはどうにもこうにも治まらない具合の悪さを抱えて、ヨロヨロヨロヨロとしつつ何とか早く自室を目指す。

そして角を曲がり、自室のある通路に出た時、



あたしの足はピタリと止まった。

















なんですか?あの人。





あたしの部屋の前で、扉に背を押しつけて座りこんでる人物。
スーパーの袋をダラリと床につけて気怠そうに座ってる人。





「よー、遅いなお前。何時までバイトしてんだよ?」



「……………あ、悪魔…。」

「は?何か言ったか?」


「………イエ、別二……。」

「んじゃ、早く鍵開けろよ。俺、待ちくたびれたぜ。」



「………………。」

















あたしはいっきに血の気が引いていくのがわかった。











 








悪魔さん、今日も上がり込む気ですか?







 
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