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□110000h感謝記念「シバリアイ」
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信号が変わればキスも終わり。


日番谷君はあたしを引き寄せたまま上手に片手で運転する。
あたしは少しもがいて脱け出すことを試みたが彼の力が余計に強まっただけだった。


「運転しにくいでしょう?」


「全然。」


「この態勢やっぱりつらい……。」


「大丈夫だって。」


「いやそれあたしのセリフだから。」


斜めになった身体を彼の胸で支える形。どうあっても離してくれなさそうな彼に仕方ないと降参し、あたしは身体の力を抜いた。






やがて車が大通りから折れると街の灯りが急に減った。
そぅっと視線を上へずらせばさっきまではっきり見えてた日番谷君の顔がモノクロに映る。真っ直ぐ前を向いて運転してるその顔をあたしがジッと見てることに気づいてるはずなのに、彼は何も言わずにただ前を見つめてハンドルを握ってる。


暗くてもちゃんと見えてる表情にあたしの悪戯心がむくむくと。
近くにある彼の顔、背中を伸ばしてその頬と首の境目に軽く唇を寄せた。


「おい、危ないだろうが。」


ピクリと反応し、さすがに声を上げる彼にあたしはもう一度今度はちゅ、と強く吸い付いた。


「止めろって。」


「ちゃんと前みて運転して。」


止めろと言いながらそれでもあたしを離そうとはしないんだ。

あたしは運転中の彼の胸に手を置いてキスの続きを。
顎に喉に、頬に首筋に。
時々強く吸い付いて、ちゃんと跡を残してあげる。


「危ねぇって、止めろ。」


「うん……。」


返事はしても彼の言葉は軽く無視。ほんとに止めて欲しいならあたしを離せばいいじゃない。
たぶん次の赤信号で彼が反撃を開始する。それまではたっぷりあるあたしの攻撃ターン。思うぞんぶんキスしちゃう。

愛しい思いを贈るキスを、欲望に駆られた誘うキスを、よそ見しないための束縛のキスを。


「や…めろって……、」


「ん……ダメ…もう少し。」


ブルーのTシャツを少し引っ張って彼の鎖骨に軽くキスして歯をたてた。
途端にあたしを抱く彼の手に力が入って車はいきなり路肩に止められた。

前ぶれ無しの素早い行動にさすがにやり過ぎたかと息を詰めて彼を見つめてると、さっさとエンジンを切ってすぐさま唇を奪われた。
すっぽりとあたしを抱きすくめ、深いキスを何度も何度も。


「止めろって言ったのに…帰るまで我慢できなくなっただろうが。」


「そんなの知らな…ん、」


あたしの反論なんて聞く耳持たず。
日番谷君は助手席にあたしを押し付けて覆い被さってきた。


「ん……こんな所で……、」


「運転中に誘ったお前が言うな。」


「や……そんなとこ…隠せない……、」


「俺のこの跡はどうしてくれんだよ。


あたしの首筋に強く強く吸い付いた日番谷君を押し返したら鎖骨についた赤い跡を示された。
どうしてくれんだよと言われても、どうもしないよ。
暗がりの中、翡翠の瞳も暗く妖しく光ってる。今じゃはっきりと熱を帯びた彼の瞳と目を合わせ、小さく笑ってしまった。

あなたも今あたしに同じものをつけたんだからおあいこでしょ?日番谷君はあたしのものであたしは日番谷君のものだっていう印なんだからたまにはみんなに見てもらおうよ。


「…………もっとつけても、いい?」


あたしに影を落とす日番谷君の首に手を回し、ねだるように囁いた。
そっと優しく唇が降りてきて、重なり、ずれて、もっと奥へと沈んでいく。


「…じゃ……俺ももっとつけていいか?」


耳に吹き込まれた吐息に震えた時にはもう引き離せないくらい強い力で抱きしめられた。


うん…、もっともっとあたしに跡をつけて、窒息するくらい縛りつけて。


何も考えられないくらい幸せな瞬間。


 
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