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□110000h感謝記念「シバリアイ」
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長いつき合いだけれど日番谷君がこんなにもやきもち焼きだったなんて知らなかった。
友人の結婚式やら映画のお誘いやら、あたしの休日の予定が彼以外の人で埋まったなら軽く不機嫌。
少しお酒を飲んで帰ると言えば店の場所からいっしょにいくメンバーの名前まで聞いてくる。
友達でいた頃はそんな素振り微塵も見せたことなかったのに今頃知った日番谷君の新たな一面にびっくりだ。
今夜は高校時代の同級生との食事会、これも始め伝えた時は渋い顔をしていたけれど全員女の子だよと言ったら僅かに彼の表情が緩んだ。
飲んで食べて騒いで日頃の鬱憤やみんなの恋愛事情に話の華を咲かせ、数時間後に御開き。友人と別れて鞄の中に入れてた携帯を開けば数件のメールが入ってた。発信者はすべて彼。
マナーモードにしっぱなしだったことに罪悪感を感じる一方で呆れたため息をついてみたけれど緩む頬は抑えられない。
いつもの番号へコールしたらすぐに愛しい彼の声が聞こえた。
「終わったのか?」
「うん、連絡遅くなってごめんね。」
「今どこだ?迎えに行く。」
「いいって。まだ電車があるし、自分で帰れるよ。」
「……もう近くまで来てんだ。どこかわかる所に立ってろ。」
「え…もしかして待っててくれたの?」
「…たまたま出かける用事があったんだ。」
ほんとかな?
でも嘘でも本当でも嬉しい。
「今一人か?」
「うん、そうだよ。駅に向かって歩いてるとこ。」
「……男の声がした…。」
「えー?あ、タクシー乗り場でおじさん達が騒いでる。今その後ろ通ったから…。」
「紛らわしいな…。」
「日番谷君の耳が良すぎるんだよ。」
嫉妬の気持ちを隠そうともしない彼にクスクス笑いが漏れた。
さっきまでいっしょに飲んでた友人達は嫉妬深い男なんて最悪だとぼやいていたけれどあたしは頷けなかった。だってそれだけあたしを好きっていうことでしょ?あたしを独り占めしたいってことでしょう?どうして最悪なのかなあ?こんなにも幸せでくすぐったいのに。
一人で笑っていたらあたしにつられたのか日番谷君も電話の先で笑ってた。低く喉を鳴らして何がおかしいんだよと問いかける。
あたしのこと、がんじがらめにするアナタがおかしいの。それに喜んでる自分がもっとおかしい。
「早く場所言えって。」
「今、北角の銀行前だよ。」
「あ、わかった、お前が見える。」
「え……あ!」
毎日見てるあたし達の白い愛車が近づいてくる。
彼によく分かるようにと手を振れば、ヘッドライトの波から車線変更した車が流れるように走って来てあたしの前で停まった。
「ありがとう日番谷君。」
「早く乗れよ。」
「うん。」
後続の車にクラクションを鳴らされる前にあたしは急いで彼の助手席に乗り込んだ。
すぐさま発進する白い車の中であたしはゆっくりとシートベルトを引っ張る。でもそれより早く隣りから固い腕が伸びてあたしの肩に手を回し引き寄せられた。
「日番谷君、危ないっ、運転中でしょ!」
「ちゃんとハンドル握ってるぜ。」
「でも片手…それにあたしこの態勢キツい……。」
「我慢しろ。」
あたしを片手で抱きながら、日番谷君は器用に車の流れに乗っている。赤信号で停まったらすかさず額にキスされた。
「ひ、日番谷君周りに見られちゃうよ。」
「車の中まで誰も見ねえよ。」
「意外に見えるんだって……ん、」
顔を上げて反論したらまたもやすかさず唇が降りてきた。
車はまだ大通りの真っ只中。前の車のブレーキランプできっとあたし達も赤く照らされてるはず。歩道はすぐ横だし、こんなのすぐに誰かに見られちゃう。
「だ…め………んぅ、」
「………んな声出すな。帰るまで我慢できねえだろ。」
赤信号なのをいいことに日番谷君はハンドルを離しあたしの顎を捕らえるともっと深く口づけた。