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□100000h感謝「お返事ください」
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松本が見てたわけないか。
あのときあそこにいたのは俺と雛森だけだった。これは確かだ。

喧嘩なんかじゃない。
ただちょっと避けられているだけだ。


「………。」


余計落ち込むな………。













いつからかなんて覚えてない。気がつけばあいつばかり目で追っていた。
ずっと大切な家族なんだと思ってたけど違うことに気が付いた。

家族ならもっと見つめていたいとか思わない。隣りから漂ういい匂いに胸が高鳴ったりしない。
近くにある唇を盗みたいとか、細い肩を抱きたいだとか思わないだろう。
家族と思ってないことに気づいたのと雛森に惚れているんだと自覚するのは同時だった。
ただ、この思いを告げるのにはかなり、相当、気が遠くなるほどの時を必要として、それは未だに成し遂げられてない。
なんせ俺は小さな雛森よりも更に小さかったし、横に並べば誰が見たって姉弟だ。
「日番谷君かわいいね、よしよし。」とかしょっちゅうで。恋する男子のプライドをあいつは簡単に砕いてくれる。

だからせめて雛森の背を越えてから告白しようと決めていた。
チビのままじゃいつまでもかわいい弟だと思った。

そしてその時がついに来たんだ。俺はン十年かかってやっとあいつを追い抜いた。
予定ではもっと早くに追い抜くつもりだったけどこればっかりは仕方ない。
雛森を見下ろせるようになった俺は、獣のように機会を窺ったりはしないけど、長い間待っただけに気持ちは限界まで膨らんでた。
身長が高くなっても変わらぬ弟の立ち位置に苛ついていたし、あいつに寄ってくる虫を追い払うのにも疲れていた。

そして俺の身体が大きくなったように雛森も女らしく成長した。ほっそりとした項から肩、背中にのびる柔らかな線がたまらない。子供の頃と変わらない笑顔なのに時々女の顔をするから息をのむ。

手を伸ばして触れたい。
もっと近くで彼女を感じたい。
俺だけが知る彼女の温度がほしい。




弟じゃない俺を見ろ。












いろんなことが飽和状態で。だからあんなことしてしまったんだ。












 
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