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□八周年記念話「より黒い」
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*原作夫婦日雛









上等の黒というのは他の黒とは格段に違うと言ったのは確か祖母だ。






























































流魂街から霊術学院へ行き、更に護廷十三隊に入隊が決まった桃の、その真新しい死覇裝を手にとって、祖母は独り言のように呟いた。とても優しい目をしていた。


入隊が決まった喜びを知らせるために、桃がなぜか院生の俺まで引き連れて潤林安の祖母の元へ帰った時のことだ。祖母は桃の門出を共に喜ぶと同時に無理をしないでと桃の身体を心配していた。優しく細められた瞳に不安の影が見え隠れしていたのに気付いたのはきっと俺だけだろう。

祖母は桃が持ってきた死覇裝を膝に置き、その弔いの黒を擦った手で傍らの桃の黒髪を何度も撫でた。嬉しそうにする桃の頭を何度も何度も飽くことなく、桃が身体を動かし立ち上がるまで祖母の手は滑らかな黒髪を撫で続けた。弔いの黒よりも黒光りする桃の髪を。



あれから何十年もたった今、そんなことをふと思いだした。
 
死神になった俺達は幾つもの死線をくぐり抜け、幸いにも生きている。





あの時幼かった俺達は大人になった。








 
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