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□40000h感謝小説『流れはとどまることなく』
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過去の恐ろしい出来事はあたしの心に澱んだ淵を作った。





流れを止どめることを知らない時間の川は、刻一刻と形を変える。

たとえ濁った水であっても長い長い時をかけて澄んだものへと変えていく。

そう、それが自然なのだ。

太古の昔から繰り返されてきた当たり前のことなのだ。











「ご苦労さま、雛森君。あとの書類関係は三番隊の方から提出しておくよ。」


あたしから受け取った紙の束を両手で揃えながら吉良君が顔をあげた。

全隊の隊長格の認印を必要とする書類は、あとは三番隊を残すのみ。三番隊以外の各隊の隊長印が全て揃っているのに気がついたのだろう吉良君が、総隊長への提出を買って出てくれた。


「え、いいの?吉良君忙しいんじゃ……。」


彼から判子を貰えたらその足で一番隊へ向うつもりだったあたしは吉良君の申し出を嬉しく思うも戸惑う。


「今ちょうど一段落ついたんだ。ずっと座りっぱなしだったから気分転換にちょうどいいよ。」


几帳面な性格の吉良君のことだから、たくさんある仕事にも雑にならずに仕上げたのだろう。右手の指についた筆跡がほんのり赤い。


「じゃあ…お言葉に甘えちゃおうかな。ありがとう、とっても助かるよ。」


さり気ない同期の優しさに頬が緩んだ。







「ところでさ、雛森君、今夜空いてる?」


「ん?今夜?どうして?」


「阿散井君や檜佐木先輩達と久々に飲みに行くんだけど雛森君もどう?松本さんも来るって。」



「んー……。」



たぶんいつものメンバー。
確かに最近みんなとゆっくりする機会がなかったな。乱菊さんも来るなら行きたい気もするけど……。


あたしの頭を一人の男の子が掠めた。



「ごめん吉良君、今日はやめておくね。また今度誘って?」


みんなによろしく言っておいて、そう言葉を添えてあたしは両手を合わせる。
吉良君は困ったように微笑んで「じゃあまた……。」と言ってくれた。






特に用事があったわけじゃない。

ただ何となく…。

…………なんとなく今日は彼が来るような気がしたから。





 
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