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□190000h感謝小話「ふわふわ」
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目覚めたのは俺と彼女とほぼ同時だった。

窓からの光が眩しくて身じろぎしたら、その振動が彼女へ伝わったらしい。
ゆっくり開いた瞳に俺が映ると一瞬びっくりした表情になり、「おはよう」と声をかけると朝陽を浴びた花がゆっくりと咲いた。


てっきり真っ赤になるだろうと予想していたのに、ふんわりと優しい笑顔にこっちが逆に赤面しちまった。
そして愛しの彼女を手に入れた喜びが一夜明けた今、改めて押し寄せて二人の初めての朝に泣きそうになったのは俺の方だった。


「おはよう…日番谷くん…。」


一つの布団の中、向かいあった桃の柔らかな微笑みが俺の胸に染み込んでいく。
息を大きく吸ったら目頭が熱くなり慌てて彼女を抱きしめた。きっとこれで涙ぐんでいることはバレないはず。けれど抑えきれない感情に抱きしめる手に力が入り震えるから、下手な誤魔化しなどしない方が良かったかもしれない。

まるで女々しい野郎な俺。
でも今日はそれも仕方ないと解ってほしい。こんな気持ちで朝を迎えたのは初めてなんだ。

俺は思いきり桃を抱きしめて。苦しがったって止められない、全力で抱きしめて、この満たされた気持ち全てを伝えたかった。





今、俺は幸せだ。
もう絶対離しはしない。
今までもこれからも、俺は桃だけを愛している。それからそれからそれからそれから…………伝えたい想いは抱えきれないくらい沢山持っているんだ。たった一晩くらいじゃとても足りない。








「日番谷くん…大好きだよ。世界で一番大好き。あたし…今死んでもいいくらい最高に幸せ…もう一生離れないんだから。」


「………………ずるいぞ…。」


伝えたいことは山のようにあったけど、高ぶる気持ちのせいで纏まらない。乱れる思考に四苦八苦していたら、ぜんぶぜんぶ桃に先を越されて俺の台詞がなくなった。


「な、なんでなんで?あ、あたし悪いこと言った?」


「いや…もう一回言ってくれ。」


「……うん……何度でも言えちゃうよ……。」


「何度でも言ってくれ…もっと聞きたい……。」


俺の肩に唇をつけて、桃は小さく小さく同じ言葉を俺にくれた。

もっともっと言ってくれ。聞き飽きるなんてことはないんだから。その声で、その吐息で、一番近くで。















そして、次は同じだけ俺から彼女に










 
 

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