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□となりのお兄ちゃん
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隣りの優しい(?)お兄ちゃんだったシロちゃんがあたしの彼氏になりました。




だからといって劇的に二人の態度や空気が変わったりはしない。告白を受けた時はとっても緊張したしドキドキもしたけれど、次の日のシロちゃんは元に戻っていた。てっきりあのまま盛り上がっちゃうのかしらと思ってたから少し肩透かしを食らった気分。あまりの変わらなさにあたしは「ん?」てなるくらい。「そういや、あたしとシロちゃんて恋人なんだっけ?」てなるくらい。

こんなんで付き合ってると友達に話したらたぶん呆れられちゃう。もしかしたら「絶対、変!」かなんか言われてお付き合いのノウハウを説かれるかも。あたしとしては急に恋人っぽいシロちゃんに激変されても困るから今の状態に不満は無い。二人で出かけてお話して、時々口喧嘩して戯れあって。そんな今まで通りがこれからも続いていく、そう約束されて嬉しかったりする。あの日シロちゃんは何も変わらないと言ってくれた。だからあたしは安心した。
崩れない関係に安心した。
あたしはあたしでシロちゃんはシロちゃん。
「今」にとても満足してるもの。無理に変わることないって思うの。


















とは言っても、大学生になったシロちゃんは制服から私服になったせいか大人っぽくなった気がする。落ち着いた性格が余計に拍車をかけるのかもしれないけれど私服姿なんていつも見ているはずなのに、あたしの目がおかしいのかな?いや、私服姿でだって本気でキめた時のシロちゃんは格好良かったけれど、なんと言いますか、近頃の彼は「男の人」って気がする。



「ん?どうした?じっと見たりして。」


「なな、なんでもない。」


視線に気づいたシロちゃんに問いかけられて慌てて首を振った。シロちゃんはそんなあたしの挙動不審を大して気にとめずに自販機にコインを投入、ガコンと音がしてシロちゃんがブラックの黒い缶を取り出すと、あたしの分のお金を入れてどれがいい?と聞いてくれる。でもその指はあたしの答えを聞く前に既にココアのボタンに掛けられてて。

以心伝心といえば聞こえはいいんだろうけど、なんでかな?なぜかとても面白くない。


「こ、これ、この新発売のやつにする!」


「これ微糖コーヒーだぞ?飲めるのか?」


疑いの目を向けられてあたしは大きく頷いた。その聞き方にもあたしは密かにカチンときている。



あたしだって普通にコーヒーくらい飲めるんですよ。知らないんですか?勝手に決めつけないでくださいな。そりゃあシロちゃんはブラックがお似合いですよ。服だってその気になればフォーマルだってB系だって似合う………いや、B系はないかもだけど。


「今はコーヒーが飲みたい気分なの!」


「ふーん。」


「何、その疑いの目は!?」


「普通の目だけど…。」


「毒でもあるまいし、コーヒーくらいで奇妙な物を見る目で見ないで!」


シロちゃんが急に怒り出したあたしにきょとんとしている。おかしいよね、自分でもおかしいって思うもの。
たぶん、こんな些細なことでムキになってしまうのは不意にシロちゃんが男の人に見えるからだ。



 
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