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□それぞれの
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日番谷side





一生忘れないと言った雛森が可愛すぎて瞬きも出来なかった。
上手い言葉も返せなくてただ見つめるしか出来ない俺に、彼女は恥ずかしそうに笑い、仕事中だからまた後で、と言って帰って行った。何時もよりやや勢いよく閉められた戸の向こうで雛森がパタパタ走り去る音がする。たちまち遠くなる彼女の足音さえも名残惜しく思うのは初めてじゃないだろうか。


今日から俺達は…。
そう思ったら先ほど以上に胸が高鳴り武者震いした。閉まった戸を見つめたまま少し落ち着けと固く拳を握ったけれど胸が膨らんで破裂しそうだ。

もう、雛森を好きな気持ちを我慢しなくてもいいのだ。彼女を思う心に蓋をしなくていい。誰かに想いがバレたって恋人ならば堂々としてられる。色んな事があった俺達だけど全てを乗り越えてここへたどり着いたのだ。そう思うとこみ上げてくるものがある。握った拳を思いきり突き上げたい。
けれど今日の仕事はまだ終わらなくて。俺達の関係が劇的に変化したって執務には無関係だ。









…仕事なんか手につかねーぞ。



あっったり前だ。たった今俺の人生が大きく変わったんだ。仕事なんか手につくか。


「…………。」



幸い松本は朝出かけたっきり戻ってこない。執務室には俺ひとり。




サボるか?……もとい、雛森の様子でも見に行ってみようか?でも今帰ったばかりの彼女を追いかけてきたみたいじゃないか?何か五番隊に用事はないかな?ていうか終業まで待てよ俺。
別れた直後にまた会いに行くってがっついていると思われないだろうか?そわそわして舞い上がっている男そのものか?そのものだな。



でも会いたいんだから仕方ない。


両想いになれた喜びを一人しみじみ噛みしめるのもいいけれど、できるならもっと一緒にいたかった。恥ずかしさ故、身の置き所が無かったんだろうが風のように帰らなくてもよかったのに。後五分や十分、ここで過ごしていけばよかったのに。まったく俺の雛森の恥ずかしがりにも困ったもんだ。







…………俺の雛森って/////。


いかんいかん、無意識に俺のもの発言しちまった。自分でも独占欲が強いとは思っていたが両想いになれた途端、所有者気取りはダメだろう。雛森は物じゃない、俺の大切な想い人だ。
そうさ、彼女を束縛するような恋人にだけは絶対になりたくない。俺は束縛されるの全然OKだけどな。雛森が他の女と喋ってる俺を見て「あたしの日番谷君に馴れ馴れしくしないで!」なんて言ってくれるのも全然OK。更に俺に向かって「あんまり他の女の子と仲良くしないで!」と泣きながら訴えてくれても無問題。
あいつも少しは独占欲を発揮すればいいのに。まぁ、あののんびりした性格じゃあ嫉妬なんかほど遠い気はするな。ちぇ、てことはこれからも嫉妬するのは俺ばっかかよ。だいたい雛森の周りには親しい男が多すぎるんだ。死神稼業だから男が多いのは仕方ないけどやたら同期だ先輩だと知り合いが多いし部下とのつきあいもいい。特に平子の野郎とプライベートまでつきあいがあるっていうのは複雑だ。もしかして平子のヤロー、上司の権限を振りかざして雛森を無理矢理付き合わせてんじゃねぇだろうな?それにあいつだけ雛森のこと桃呼びしてやがるし、一度注意してやろう。いや、それって心の狭い彼氏かな?雛森が許してんのに俺がしゃしゃりでるのもなぁ。でも恋人としては面白くねぇ。やっぱ言う!俺がスッキリしねぇ!
うん、五番隊へ行く用事ができたぞ。



「そんなとこで何ブツブツ言うとんねん。入るんやったら早よ入れや。」


「あ、あれ?日番谷君?なんでここに?」


「え…雛森…平子?」


「どうしたの?あ、もしかしてあたし何か忘れ物してた?」


「………。」


「日番谷君?」













知らないうちに五番隊へ来てた。



 
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