ss

□目玉焼きと彼は知っている
1ページ/1ページ




昨日幼馴染みの彼に告白した。
言うつもりなんてまったくなかったからその場の勢いというやつなんだけど、自分の考えのなさに今、後悔してる。





「はあ……。」


朝食を食べるために席についたけど、目の前に置かれたプレートに乗っかった目玉焼きを見たらまたため息が出た。
目玉焼き、大好きなんだけど。
いつもならケチャップかけて喜んでパクつくんだけど。(あたしは断然ケチャップ派だ)
今はただその目玉に睨まれているようで喉が詰まる。



今日、学校で彼に会ったらどんな顔すればいい?にっこり笑って何事もなかったかのように、おはようって言うべきか。それとも元々ダメ元当たって砕けろで返事をきこうか?


「はああぁ……。」



何回目かの深いため息をついた時、お母さんの「早く行きなさい。」の声。
それを受けてあたしは重い腰をノロノロとあげた。











通学路を歩く生徒の波に、揺られるように歩んで行く。

昨日の自分をやり直せないかと知恵を搾るけど出てくるのは、さっき食べ残した目玉焼きの残像と、やっぱりため息。


あたしがうなだれて歩いていると後ろから肩を叩かれた。

「おい。」


「…へ、………ひ、日番谷君!」


呼び掛けられて振り向けば、あたしの後ろに立っていたのは悩みの元凶、大好きで、今一番会いたくなかった幼馴染み。

朝日を浴びた彼の髪が白く輝いて、普段のあたしならその光景に見とれるところだけど、今朝はそんな余裕ない。


「あわわ、…えと、えっと、……おおおはよう!」


噛みすぎでしょ、あたし。んでもって吃りすぎ。


「ぷ、お前顔真っ赤だぞ。」

あたしの真ん前に立って笑う日番谷君がまともに見れない。恥かしくて俯いたあたしは、きっと更に赤くなってる。

「まるでトマトか苺だな。……俺両方好きだけど。」


「は………?ごめん、よく聞こえなくて…。」


「………。」


「日番谷君?」


「……………。」

返事をしてくれない彼は、怒ったように赤い顔になって、あたしは余計に焦る。

朝から考えてた幾つかの選択肢。それを使う時が今なのだろう。
確か二つ(そんだけしか思いつかなかった)。
何事もなかったことにするか、はっきりさせるか。

うん!あたしも女だ!ここは潔くバシッと……。





「あ、あの…日番谷君!あたしが昨日言ったこと……忘れて!」






























ああ…。あたしって、救いようのない馬鹿だ。
意気地なし。
恥かしくって
情けなくって
顔があげられない。
何が選択肢なんだか……

日番谷君にも迷惑かけた。
きっとこんな馬鹿な幼馴染みに呆れてる。



長い長い沈黙に身を縛られる。日番谷君のため息があたしの頭にかかったのがわかった。


「嫌だ。忘れない。」


「え……。」


泣きたくなってきた。


「だって俺、すげぇ嬉しかったから。」



そう言ってそっぽを向いた日番谷君の頬は赤くて…。
本当に赤くて…、たぶんあたしにも負けないくらいに。


「今日の放課後、いっしょに帰ろう。」


あたしの耳元で囁いた日番谷君ははにかんだように笑って駆けて行った。
後に残されたあたしは訳がわからなくて。



「…………え?」


どういうこと?






































そういうこと!

 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ