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□過去拍手・頭の上は空
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頭の上は空
@桃
全国の高校の中で生徒が自由に出入りできる屋上がある学校って、いくつあるのだろうか。
私が通う高校は全校舎、すべて屋上へ通じるドアには、いつも鍵がかかっていた。
入学当初、友達のルキアちゃんとおもしろ半分に最上階へと通じる階段を上り、屋外へ出るべくドアノブを回した。
期待に瞳を輝かせて。
その時のルキアちゃんの表情も、よく覚えている。
いつも落ち着いた彼女だが、あたしが回す前、彼女と目を会わせたら、まるで子供のように笑った。
それがすごく可愛いかった。
けれど、あたし達の期待とは裏腹に扉はノブを回してもビクともせず、ガチャガチャと回転を途中で止めるばかり。
「ま、当然だな。こういう所のドアは安全のため、何か事がない限り開かないだろう。」
ふ、と息を吐き苦笑した彼女は、もういつものルキアちゃんで、あたしは扉が開かなかったことよりもさっきの笑顔が消えてしまったことのほうに肩が落ちた。
さっきまでの、きらきらした瞳の彼女。
忘れられなかった。
それがどうしてももう一度見たかった。
そして
三年生になったその日から、
あたしの屋上通いが始まった。