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□なんてことのない日常
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なんてことのない日常
「こんにちは日番谷君。…あれ?乱菊さんは?」
「聞くな。見ての通りさぼり中だ。」
机の上に山と積まれた書類に埋もれるように座っている日番谷。
「…大変そうだねぇ。手伝ってあげようか?」
「あ?お前だって仕事があるんだろ?」
「ううん、これが最後の仕事だよ。あたしは今日はもうあがりなの。だから気にしないで。」
「そうか、悪いな。」
「えへへ、日番谷君に貸し一つだね。」
「…ちぇ。」
あいている乱菊の机に向かう雛森に不機嫌を装いつつも嬉しそうな日番谷。
サラサラ………。
静かな執務室に聞こえるのは二人の筆を運ぶ音だけ。
「…なんだか十番隊の副官さんになった気分だよ。」
にっこり笑う雛森に
「何言ってんだか…。」
と受け流すも眉間の皺は消えている。真面目な雛森とこなしていく業務は予想以上にはかどり、未処理の書類も残りあと僅かとなった。
雛森はふう、と息をついて筆を置き、縮んだ背中の筋肉を
「うーん。」と伸ばした。
「日番谷君。お茶淹れようか?」
依然として紙面と睨めっこしている幼馴染みは雛森の声が耳に入っていないようだ。
集中しているのか…。
そんな日番谷に腹をたてるわけでもなく、くす、と微かに笑って静かに席を立った。
「日番谷君。お茶が入ったよー。」
数分後、雛森がお盆に二人分の湯呑みを乗せて戻ってきた時、日番谷の目はまだ書類に釘付けだった。
またしても雛森の声は聞こえていないようだ。
二度目の呼び掛けも無視、となると少し面白くないわけで。
も少し強く言ってやろうかと再度口を開きかけた時、雛森の頭にピコンとひらめくものが一つ。
机に向かう日番谷にしずしずと近付くと、す、と日番谷の邪魔にならない位置に湯呑みを差し出し、
「あなた、お茶をどうぞ。」
そんな言葉と共にコトリと置いた。
「……………は?」
間の抜けた顔で聞き返し、その一瞬の後、火がついたかのように真っ赤になった。
「ぷっ、…あっはっはー!日番谷君の顔……あはは、お、おもしろーい、あはは、…く、苦し…。」
どうにも笑いが止まらずに、終いにはしゃがみこんでしまった雛森。
「雛森…!てめえ!」
「わー!やだ!日番……。ちょ、……ごめんってば!」
怒った日番谷がしゃがんでいる雛森の頭を抱え込みグリグリ。
「痛い!いたた、やめてよー!もうしないからぁ!」
「知るか!雛森のくせに俺をおちょくるなんざ十年早いんだよ!」
「ふぇーん!」
「男の純情をもて遊びやがって!」
「うわああん!ごめんってばー!」
なんだかんだとじゃれあう日番谷と雛森。
それから延々と戯れ合う二人
「………入りにくいわね。」(隊長なんだか楽しそうだし。)