短編1
□疲れた時には甘い物
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「はぁ〜、思ったより早くおわりましたね隊長」
金髪をかき上げながら十番隊副隊長 松本乱菊がいった。もっと長引くかと思っていた現世任務が早く終り俺達は報告を終えると、十番隊執務室へ戻るべく足を向けた。その途中 浮竹に出会い 帰るついでに急ぎの書類があるから寄っていってほしいと告げられた。帰るなり書類と聞いてゲンナリする松本をジロリとにらみ浮竹についていかせる。どうせ帰ったらすぐに事務仕事と格闘になることは、現世にいく前からわかっていたこと。
「毎回毎回書類ためやがって」
己の副官を呪いながら執務室の戸を開く。出発する前となんら変わらぬ部屋。 机の上にある大量の書類も変わりない。………そうソファーの上で眠っている五番隊副隊長を除いては…。
がっくり肩を落としながら足を進め呑気に寝ている雛森に近付く。
「なにやってんだよ…」
テーブルの上には和菓子。おそらくこれを一緒に食べようときたのにちがいない。こいつ仕事はどうした?とは思うも、帰ってきてすぐに愛しい顔に会えるのは素直に嬉しい。
そっと前に廻りこみしゃがむ。よく寝てんなーなんて思いながら、柔らかな頬をつつき、そして頬にかかる髪をどけてやる。サラサラな黒髪は指で掬っても絡むことなく落ちていく。今、執務室は雛森の寝息が僅かに聞こえるだけの静寂に満ちた密室。
深く眠っている雛森は多少のことでは起きそうにない。
さて、どうしたものか…。
答えは考えるまでもない。たたき起こせばいいだけだ。ここは仕事場で俺達は勤務中だ。……だが、この幸せそうな寝顔をもっとみていたい。
閉じられた瞼を縁取る長い睫毛。こいつ、こんなに睫毛長かったっけ?先ほどはらった黒髪が細い顎と首筋にかかっている。
白く透き通るような肌。その項と首筋にごくりと生唾を飲む。
理性と本能の戦いが始まりそうな予感がしてきた。
多分もうすぐ松本が戻ってくる。
頭のなかでそんなことを考えていながら視線は雛森の細く薄い肩をなぞり、括れた腰へ、さらに形のいいお尻まではわせる。子供みたいな寝顔のくせに身体からはなんともいえない色香が漂う。
つ、 と手を延ばして腰に触れる。
だめだだめだと思うのに手は下へ進みお尻を撫で上げる。顔を近付け雛森の甘い香りを吸い込みつつ口づけーー
「たっだいま〜、隊長もらってきましたよ〜」
明るい声で松本が必要以上に元気に入ってきた。
俺は瞬時に身体を雛森から離した。
「松本ーー!!いきなり入ってくんなーー!!」
ビックリしただろうが!しかも未遂に終わっちまったじゃねぇか!あともうちょっとだったのに…。
こいつ絶対に確信犯だ!
自分でも顔が紅いのがわかる。
「いいじゃないですか。それともなにかよからぬことでもしてたんですかあ?」
「馬鹿野郎!!俺は!!別に!雛…も…「〜ん〜!あ!日番谷君、乱菊さん!おかえりなさい。 お仕事ご苦労様!」
寝起きながらも優しい笑顔で笑いかけてくる雛森。
よかった。今の会話聞かれてないようだ…。
「ああ、ただい「ただいま、雛森〜浮竹隊長から雛森がお菓子持って待ってるからって聞いて急いで帰って来ちゃった〜」
ガバリと抱き付く松本。 野郎やっぱりわざとか!
「そしたら隊長が雛森を食べる直前でさ早く帰ってきて良かったわよ。」
「ワアアアア!!」
「は?…私を食べ…?ああ、これですね」
テーブルの上の菓子をとり
「疲れた時には甘いものがいいかなって!」
ニッコリ微笑む。
キュン
ああなんでこいつはこんなに可愛いんだよ。
可愛くって甘くって、見ているこっちがその笑顔に溶かされそうになる。