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□230000h感謝小話「グルメ時代」
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グルメ時代















風呂上がりの後ろ姿にそそられて、タオルで髪を拭く彼女を後ろから抱きしめた。ここから俺達の甘い時間の始まりだ。

俺は当然のように彼女の顔に顔を寄せて薄く染まった頬にキスを一つ。ピクンと反応したことに気を良くして細い項にもう一つ。更に首を伸ばして美味しそうな唇にも…、


「おい………手ぇどけろ。」
「終わりです。」
「なにが終わりなんだよ?いっしょに風呂に入らなかったのを怒ってんのか?」
「んなことで怒るかー!」
「じゃあなんで。」
「あたし風邪気味だから染っちゃうよ?んむ、」


なんだ、そんなことか、しょうもない。大層な理由じゃないなら破棄してやる。

僅かな拒絶も許さない、と予定通り彼女の唇へ到達したが、直ぐに桃は俺の胸を押して顔を背けた。


「おいこら。」
「駄目って言ってるの。」


湯上がりの、まだ湿った髪からも身体からも湯気が出そうなくらいホカホカな桃。腕の中に囲った彼女はそれはもう食べ頃に温められてて、とっても美味そうなのにお預けか? 風邪気味ったって、そんなの俺が直してやるっての。


細っこい手で俺の胸やら唇をぐいぐい押して、桃は抵抗の意志を止めようとしない。まぁこんな弱い力、俺にとっちゃあ盾にもならないがな。すでに火がついている身にとっては風邪のウイルスくらい熱で殺菌できる自信がある。


「こ、こら、駄目って言ってるでしょうが。染るってば。」
「体調が悪いのか?熱は?」
「熱は無いけど少し喉が痛いの。」
「なら早めに叩いた方が良くないか?」
「あ、」
「こうやって。」
「ん、ん、」



はらりと桃の肩からタオルが落ちた。勿論そんなの放ったままで俺は彼女を後ろから侵攻する。唇を奪われながら、桃はまだ抵抗を止めないが、ばたばた暴れたってうんうん唸ったって無駄な行為だとこいつはいつになったら学習するんだろう?ここで俺が止めた試しがあるかっての。
じゃれているような抵抗など抵抗ではない。俺は彼女の顎を捉え、甘い唇を堪能する。



「んー、もう!離して!」
「早くベットへ行こうぜ。」
「あのね日番谷君、風邪を甘く見ちゃ後でたいへんなことになるんだよ?」
「知ってる、だからあっちで早く、」
「そうじゃなくて。あたし日番谷君に風邪ひいてほしくないの。だからあんまりくっついちゃ駄目。」


僅かにできた隙間に手を入れて、またもや俺の唇を押す桃は、まるで小さい子供に言い聞かすように言った。「だから、ね?」と年上の顔をすれば俺が言うことを聞くと思ってるんだろう。


「……つまんねぇ。」
「早く直すからね。」


顰めっ面で言うと桃は笑ってよしよしと俺の頭を撫でた。腕の中に囲った彼女はまだホカホカで、柔らかな感触と立ちのぼる香りは思いっきり食欲をそそられる。


食いてぇ


「きゃああ!」


それはほとんど衝動だ。
桃の膝裏に素早く腕を差し込み彼女の軽い身体を持ち上げた。耳元での叫び声はなかなかにうるさいけれど我慢しよう。


「やっぱ早くベットへ行こう。」
「あたしの言ったこと聞いてくれたんじゃなかったの!?」
「聞いた。その上での判断だ。」
「染るって言ってるでしょ!あたし本調子じゃないんだよ!?しんどい!」
「ついでにお前の風邪も直してやるよ。」
「荒療治いやだー!」



半泣きで叫ぶけど、よく考えろ、いつだってそうだろが。風邪はひきはじめに叩いてこそ効果てきめんなんだ。それを俺達は何度も実証済みだ。それに何よりも美味そうな匂いをさせてるお前が悪い。食べ頃を逃すなんてもったいないこと俺はしない。


「日番谷君のばかぁ……。」


腕の中から抱き上げられた桃が恨めしげに見上げてくる。さっき見せた年上の顔はもうどっかへ隠れてしまったのか?皿の上に乗せられた美味しい桃は早々に観念したようだ。


ちゃんと食ってやるから安心しろ。ついでに悪いウイルスも退治してやるからさ。



というわけで、今夜も俺はいただきます。











トリコさんですか?
 

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