スイーツパラダイス
□ラブベリーパイ
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「え?ケーキ?」
「うん!」
「桃、ケーキはたぶんおばさんが買ってくるよ。」
「えー、もも前食べた赤いケーキがいいな。」
「赤いケーキ? ああ…そういえば作ったわね。」
少し以前にお菓子作りがマイブームとなった時があったっけ。子供と一緒にお菓子作りをするのに憧れて休みの度に作ってた。クッキーやプリンも作ったな。遊びに来てた桃もよく手伝ってくれたから幼い記憶の中に強く残っているのだろうか。
「赤いケーキが食べたいな。」
「うーん、でもケーキが二つあってもねぇ…。」
確か姉はケーキも注文したと言っていた。
「桃、今夜みんなで白いケーキがあるから。」
「じゃあ赤いのと白いのと食べるー。」
「二つも無理だよ。」
「へーきだもん。ももケーキ大しゅきだからいっぱい食べられるもん。」
「うーん、確かにあたしもケーキは大好きよ、でもなぁ……。」
「もも、プレゼントはチロちゃんのおかぁしゃんが作ったケーキがいいなぁ……。」
控えめにぽつりと呟いた姪っ子は少し寂しげで…超絶かわいい!あどけない表情で縋るような上目使いって。
あたしの胸がキュンとときめいたって誰も文句は言わないと思うほど。
桃、あんたって子は!
ある意味冬獅郎よりも末恐ろしい子だわ。
「いよぉし!じゃあ作るか!」
「ほんと?」
「ほんとほんと。ケーキ好きの女が三人いればきっとケーキの二個や三個直ぐに平らげちゃうわ。」
こっちでもケーキを作ったと知った姉が苦笑する顔が目に浮かぶ。でもたぶんあたしと同じように甘い物好きな彼女は喜んでくれるはず。
そうと決まればあたしは冷蔵庫を開けて材料を確かめた。ことの成り行きを黙って見てた冬獅郎があたしの横へ来ていっしょに覗く。
以前作ったのは苺のタルトだったと記憶している。あたしのレパートリーの中で赤いケーキなんてそれしかない。
冷凍庫を開けると冷凍パイシートとラズベリーが一袋。
なるほどなるほどと脳内レシピを捲り、ラズベリーパイの作り方を思い出す。
「なに、それ?苺?」
「ラズベリーよ。」
「らじゅ…?」
上手く舌が回らない桃は初めて聞いた単語に不思議顔だ。冬獅郎はというと。
「ラブベリー?」
これまた上手く言えてない。
仲良く並んだ白と黒の小熊に笑ってあたしは早速腕まくりをした。