Der Mondhimme U
□ 偽りの言葉
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『お兄ちゃんー』
そう、ニコニコと笑いながら駆け寄ってくるリオ。
『んー?』
俺も優しく微笑み、振り返る。
{ぁぁ、愛しい・・・}
いつもいつも思う言葉だ。
思うのは当たり前、だって本当は俺の・・・『お兄ちゃんっ♪』
手を伸ばし、抱っこをせがむリオ。
俺は苦笑しながらも、抱き上げると嬉しそうに笑う。
この顔を見ると胸が痛む。
本当のことを言ってしまいたいと言う衝動に襲われる・・・だけど
『本当は違うンだぞ・・・』 なんて、言えないよな。
こんなにも、嬉しそうに笑ってるのに・・・
真実を知らず、俺のことを兄と思って居る、信じているのに
本当のことなんて・・・っ
『お兄ちゃん、僕、お兄ちゃんのこと大好きっ♪』
不意に言ったその言葉。
その言葉を聞いた瞬間、俺はリオを強く抱き締める。
知らず知らずのうちに涙が流れ出す・・・
『? お兄ちゃん?』
心配そうに顔を覗き込んでくるリオ。
『・・・ぁぁ、ごめん、なんでもないよ。
ありがとうな、リオ、兄ちゃんもリオのこと大好きだよ』
直に涙を拭い、笑顔でそう答えると、安心して嬉しそうに笑い返して来る。
ありがとう、リオ、兄ちゃんもリオのこと大好きだよ
俺はこの言葉にも、偽りを重ねた。
本当に言いたかった言葉は・・・
『・・・嬉しいよ。兄ちゃん・・・いや、父さん、凄く嬉しい・・・父さんもリオのこと大好きだよ・・・』