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□彼女様の仰せのままに
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「てゆーかあんたらテニス部は何考えてるのよ。」
「何が?」

少し苛ついて言うと幼なじみの彼は何もわからない、とでも言うように返してきた。
日も海に沈みかけた夕方、影が長くなり少しの風でも肌寒く感じる時刻。
私は海岸沿いの道路をひたすら自転車をこいで進む。
いつもは1人だしもっと楽だけど今は彼を荷台に乗せているためペダルが重くなり足がパンパンに張
ってきた。

「こんな時期に半袖半ズボンで海に入るなんてさ。」
「半袖半ズボンじゃないと濡れるよ?」

彼はそれが普通だろ?とでも言うように言葉を返してくる。
半袖半ズボンであっても何をふざけあっていたのか彼は全身びしょ濡れである。
こんなことならタオルをもう1つ持ってきてやればよかったと少し後悔する。
おばちゃんたちも私に迎えにいかせるときはいつも2つは持たせてくれるのに何で今日に限って忘れ
るかな。
ちなみにその1つのタオルは彼がお尻が痛くなるといって荷台の上に置いて座っている。

「あー、もう!そんなこと言ってるんじゃなくて!!こんな寒い時期に海に入って風邪なんかひいたら
どうするのさって話!」

すべてのタイミングが悪かったことに対し少し苛立つ。
とりあえず今は背中が寒い。
でも、私で寒いと思うなら彼なんかはもっとひどいはずだ。

「心配してくれるんだ」

私の葛藤に気づいてか否か彼に後ろから囁かれた。
敢えて疑問系ではないのは彼だからだろう。

「あんたの、じゃなくてあんたの周りね。無駄に顔だけはいいから人が集まるじゃない。」
「素直にかっこいいって言えばー?」
「ぜーったいにいや!!」

例えそう思っても口に出して言ってやるもんか。
そうは思っても彼には全てわかってしまうんだろうな、と思う。
現に今顔が熱い。
それにそんな私を見て後ろで彼が微笑んでいる気配がするのだ。
一生私は彼には勝てない。

「…虎次郎は帰ったら即風呂に入ること!で、髪乾かしたら私のチャリ拭くの手伝って。あんたの付けた塩なんだから。」

すると後ろからハイハイという声が聞こえてきた。


彼女様の仰せのままに


for 時計ウサギさま
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