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□耳元で告白
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「不二くん。」


ふいに名前を呼ばれて顔をあげると最近よく視界に入るあの子がいた。
何だか困ったような顔をしているけど僕がそんな顔をさせるようなことをした記憶は全くない。
それでは何だろう?
そう考えていると彼女は恐る恐るといった様子で口を開く。


「あの、ね。先生が係2人で運べって言ってた荷物があるんだけど手伝ってもらえる、かな?」

「ああ、なんだそんなこと。全然構わないよ。」

「本当?」

「…僕が自分の仕事も放り出すような人だと思ってるのかい?」

「そ、そんな訳ないじゃない!」


あっけらかんと話す僕に彼女は意外そうな顔をした。
もちろん、そういう意味で驚いたのではないだろうとわかっている。
けど少しからかってみると彼女はみるみる顔を真っ赤にして否定した。
その様子がなんとも可愛くてクスリと笑ってしまう。すると不二くんって意地悪だよね、と言って頬を膨らます。
まだ耳も赤く緊張がとれていないことが見てわかる。

「でもホント、練習時間削らせちゃってごめんね。」

荷物を取りに行き、それを先生のところまで運んだ帰りに申し訳なさそうに彼女が言った。
確かにあれは僕1人では運べたかもしれないが彼女1人では運べないような量の荷物。
もしあれが彼女1人でこと足りるような量なら彼女は僕にも頼まず1人で運んでいたのだろうなというのは簡単に想像がついた。
むしろ想像できすぎて怖いくらいだ。
その様子を思い浮かべて苦笑しそうになったけどそれは心の中だけに留めておいた。


「多少クラスのことやってたって手塚の咎めをくらうわけでもないし気にしないで。」

「でも、不二くん正レギュラーなんでしょ?他の人より練習量が多かったり…」

「そういうのもあるときもあるけど基本はみんな同じメニューをこなすから大丈夫。」


そう言うと彼女はそうなの?と尚も心配そうにこちらを見た。


「それにね、」


耳打ちしたら顔を真っ赤にしてフリーズした姿がかわいくて笑ってしまったのにきっと彼女は気づいていない。



耳元で告白


(僕、君が好きだからできることがあれば頼ってほしいな。)

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