管理人が最近半兵衛熱がすごいので半兵衛ばっかりでてきます。それでも良い方はどうぞ。
最初は秀吉が半兵衛を軍を引き入れたときの話の捏造です。ギャグありません。シリアス調です。
「わしの下へ来んか?」
目の前の猿と呼ばれる男は出された茶を飲み干すと、口元を綻ばせながら言った。
三度目、だ。この男が自分のところへこうして尋ねてきたのは。
(まさか本当に来るとはね)
確かにそっちから来いと言ったのは自分なのだが。三顧の礼で、とも確かに言った。しかし、それは冗談半分でもあったために本当に来た時には幾分驚いたものだ。
勿論、この誘いを断る理由もないのだが。信長に仕えるのだけは嫌だと思う。彼の戦略には被害を最小にしようという気持ちが表れていた。容赦のない信長と違い、彼ならば、自分の考えるような…太平の世を築いてくれるのに、と思う。それには信長が非常に邪魔ではあるのだが。
「お前さんの軍略は素晴らしかった。ぜひ、わしらのところに来てほしい」
「そうですね…」
笑いながら言う彼ではあったが、その声音には真剣さがにじみ出ていた。自分を必要とされるのは嫌ではない。しかし、一歩、未だ踏み出せない。きっかけがほしかった。
「参考までに…あなたの目指す天下とは何かをぜひ聞きたいところなんだけれど」
「そりゃあ勿論信長さまの…」
「信長じゃなくて、あなたの、天下が知りたい」
そう、信長の天下などどうでもいい。自分が知りたいのは、秀吉という人物が望む世。
「わし、か。わしは…皆が笑って暮らせる世、じゃ」
…なるほど。自分と彼の語る天下は聞いただけでは明らかに別のものであるようだけれど、その趣旨は、根底は、同じものなのかもしれないと感じた。
泰平の世。皆が笑える世ならば、戦もあるまい。それはつまり寝て暮らせる世なわけで。
(笑って寝て暮らせる世…ていうのもいいかもね)
あの根暗そうな軍師も気になることではあるし。
「わかりました。…秀吉様」
ここから、自分の望む世を導き出そう。
〜終わり〜