めいん

□アカウント
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淀んだ空気が気だるくあたしを包む。
沈みかけた太陽に照らされた教室は
いつもとは違う影を作り出して
あたしの心をさらに重くした。


「はぁ…」


ため息をひとつ。
ひっそりとした校舎は孤独感を余計に強めて、ホントに泣きそうになった。
どうしてあたしは
こんなに可愛くないんだろう。素直になれない。そんな自分がきらい。


「はぁ…」


「何してんの?」


涙混じりのため息をもうひとつついたところで突然後ろから声をかけられた。
聞き慣れた声に驚くことなんてなくゆっくり振り返る。


「…ようへ…ぃ」


顔を見た瞬間
あの下手くそな笑顔をみた瞬間

あたしの涙腺は完璧に壊れた。


歩み寄って
あたしの頭を優しくなでる。


「そんなに好きだったの?」


へらへら笑いながら
いつもと同じ調子で言う洋平。


あたしは涙で詰まって答えられずに
洋平の学ランに顔を押し当てた。


「お前みかけによらず一途なのな」



少し寂しげにつぶやいた洋平は
あたしの腰に手をまわして
ぎゅって抱きしめてきた。



「お前いい加減俺のこと見ろよ」
自虐的に笑った洋平は
あたしを抱きしめたまま
耳元で囁く。


あたしはやっぱり何も言えないまま
洋平のタバコの匂いの染み付いた学ランに包まれて
ズルいことを考えてた。



「洋平」

だいぶ落ち着いた声で
洋平を呼ぶ。
腰に回した腕を少し緩めて
見上げたあたしと洋平の目が合う。


あたしはつま先をたてて
洋平の首に腕をからめて
触れるだけのキスをした。


一瞬驚いた顔をした洋平が
なんだかとても愛しくなって
もう一度触れようとしたら
洋平はあたしの頭を掴んで
乱暴に唇を押し当ててきた。



このまま意識を飛ばすまで
お互いに溺れ合ったら
全部全部
忘れられるのかな。



このまま洋平に奪われて
本能のままに愛されたら
きっと…




外から聞こえる部活の声援

差し込む夕日


ひっそりとした教室には


あたしと洋平の息遣いだけが聞こえてた。
 

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