Novel

□OPENING
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…翌日。

出立前にセルジュ城へと呼び出された三人は、正装に身を包み少したりとも待たされることなく謁見の間へと通された。

緊張でどぎまぎする三人を尻目に、謁見の間の両端から臣下が現れ…それに護られるようにして、セルジュ王国国王たるルイード・ウィ・セルジュ四世がその姿をあらわにした。

王たりえる、慄然としたその姿に自然と背筋が伸び、固唾を呑まずにはいられない。

国王は緩慢な動作で玉座に腰を下ろすと三人を見下ろした。

「……良く参ったな、諸君。事の話はセレーネより聞いておる」

そう堅くなるな、と穏やかな声音で言うと、見知った顔を見つけ王らしからぬ仕種で腕を組んだ。

「おぉ、見た顔だと思ってはいたが…ベノンティア家のクリスか」

蓄えた髭を撫でやりながら、黄金の色を宿す髪色にかの英雄の面影を感じつつ…そう言った。

「はい……ご無沙汰をしております、国王陛下」

「いつかの舞踏会ぶりではないかな?、あのか細い少年が…大きくなったものだ。かの英雄の息子の活躍、期待しておるぞ」

ぎくしゃくした風に受け答えをするクリスに国王は、それもまた重畳とばかりに笑って見せれば、幾らか三人の強張った表情も和らぎを見せた。
気負いを解そうと話し、想像通りに空気が幾らか和んだことを把握した国王は、表情を幾分か険しくする。

「しかし…魔物の凶暴化により、これ以上、我が国に危険が及ぶことは宜しくない…。

我が国の命運、諸君にかかってると言っても過言ではあるまい。……宜しく頼んだぞ」

余りの長時間の謁見は認められていないからか、臣下に急かされるようにそう切り上げた国王が王座を立ち、また臣下に伴われて奥の間へと姿を消す。

そして三人は城を出て、門前に再度集合をすることを取り決め一度、出立のために帰宅するのだった…。
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